オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

降りかかる問題は選べないが、問題を解く態度は選べる。7つの行動規範の先にある未来とは?

降りかかる問題は選べないが、問題を解く態度は選べる。7つの行動規範の先にある未来とは?

ベンチャー企業にとって、次々に襲いかかるトラブルは、切っても切れない関係です。前例のない大きなチャレンジをしていれば、なおさらです。

「起業とは、問題でできている」

これは、現オイシックス・ラ・大地の社長であり、2,000年にオイシックスを創業した高島宏平の言葉です。誰も成し遂げたことのないインターネットによる生鮮食品の販売という事業に挑戦し、創業当初はあまりの問題の多さに毎日が戸惑いの連続でした。

そんな環境のなか、できるだけ楽しく問題を解くためには、どういう態度で仕事に取り組むべきか。そを考え抜いた末に生まれたのが、オイシックスの行動規範です。行動規範をメンバーに共有できたことが、様々なトラブルを乗り越え、自分たちを成長させる上で大きかったと高島は言います。

そして、この行動規範は『大地を守る会』と『らでぃっしゅぼーや』との経営統合を経て、2018年にオイシックス・ラ・大地の7つの行動規範へとアップデートしました。

1、ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ
2、早いもの勝ち、速いもの価値
3、お客さまを裏切れ
4、サッカーチームのように
5、当事者意識、当事者行動
6、強さの源泉は成長力
7、前例はない、だからやる

この7つの行動規範は『ORDism(オーディズム)』と呼ばれています。

もともと3つの違う文化を持つ会社がひとつになったオイシックス・ラ・大地では、このORDismをどう組織全体に浸透させ、強い企業カルチャーを築いていけるかは重要度の高い活動テーマです。

そこで、今年の頭から『ORDism エバンジェリスト』という部門横断のチームを立ち上げ、浸透に向けて様々なアクションを実施しています。今回は、そのエバンジェリストチームの西根さんと柴本さんにORDismの浸透に向けた取り組むと、その先にある未来について話を聞いてみました。

(写真左)西根渡
経営企画本部 経営企画部 部長。複数の食品メーカーを経て2009年にらでぃっしゅぼーやに入社し、営業、販売、マーケティング、経営企画を経験。経営統合を受け、2018年6月からオイシックス・ラ・大地で経営企画部に着任。IRとインターナルコミュニケーションを兼任し、3つの会社が統合した会社での経営理念・行動規範の浸透に取り組んでいる。

(写真右)柴本沙恵
HR本部 人材企画室 成長サポートセクション。2004年オイシックス株式会社(当時)にキャリア入社。カスタマーサポートを経て、人材企画室に配属、研修設計や、行動規範浸透等、成長サポートに関する取り組みに従事。在職中に2回育児休暇を取得した経験を活かし、復職支援にも取り組む。

ひとつの会社として、ミッションを達成するために

──   はじめに、ORDismの誕生経緯を教えてください。

柴本さん
原型としては、社長の高島がオイシックスを創業した時から大切にしていたオイシックスの行動規範がベースになっています。

オイシックス時代は6つの行動規範だったのですが、オイシックス・ラ・大地になったことで、「当事者意識、当事者行動」が新しく加わり、現在のORDismになりました。

西根さん
私は『らでぃっしゅぼーや』の出身ですが、オイシックス・ラ・大地として統合するにあたり、各企業のこれまでの文化や価値観を慮って進めた印象があります。

これまでの社会人生活のなかで、買収などで親会社が変わる経験を何度か体験しているのですが、大抵の場合は自分たちの企業文化を買収先にそのまま当てはめる姿勢が多かったように思います。「我々はこうしてきたから、皆さんもこうしてください」みたいな。

ですが、ORDismはそれぞれの文化をしっかりと理解した上で、3つの会社がひとつになり、「これからの食卓、これからの畑」というミッションを達成するうえで、どういう行動規範がベストかを考えた末に生まれました。

──   新しく誕生したORDismを見た時、どのように感じましたか?

柴本さん
そこまで大きな驚きはなかったですね。オイシックスと大地を守る会が統合した時も、オイシックスが大切にしてきた「お客様の食卓を豊かにする」と、大地を守る会が大切にしてきた「生産者さんを守り育てる」というそれぞれの理念を融合させ、「これからの食卓、これからの畑」という新しい理念が生まれました。

そこに『らでぃっしゅぼーや』が加わり、ORDismが生まれたわけですが、やっぱり新しい文化が入ってきた時には、良い部分を柔軟に取り入れて、アップデートしていくべきだと思いますので。

西根さん
私はこのORDismを見た時に、これまで『らでぃっしゅぼーや』が大切にしてきた価値観が行動規範にちゃんと反映されていると感じました。特に、「当事者意識、当事者行動」は『らでぃっしゅぼーや』が統合する際に議論した結果、新たに行動規範として加わった価値観です。

ただ、『らでぃっしゅぼーや』時代には、価値観としては大切にしてはいたけど、うまく言語化できておらず、組織全体にきちんと浸透しきれていなかったというの正直なところ。なので、ORDismとして形になったことで、より納得感のある行動規範になったと感じました。

オイシックス・ラ・大地らしさとして、確立させるために

──   おふたりにとって、ORDismのなかで、特に「オイシックス・ラ・大地らしさ」を感じるものは何ですか?

西根さん
強いていうなら、私は「ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ」ですね。

1、ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ(Mission is Possible)

ベストを尽くしても、Missionを成し遂げることができないとプロフェッショナルとはいえない。メンバーは、プロフェッショナルとして、それぞれのMissionを成し遂げるよう活動する。もちろんベストを尽くす努力はとても大事であるが、努力の積み重ねの先にMissionの達成を常に見据え、ゴールから逆算した計画に基づいて活動する必要がある。

一人ひとりのメンバーのMissionはチームのMissionの分解である。そのための誰か一人のメンバーがMissionを果たすことができなければ、チームの勝利はおぼつかない。同時に、どのように動けばMissionを成し遂げるための活動を効率よく実行することができるか考え、常に生産性を向上させるチャレンジをすることも必要である。

生産性が低ければベストを尽くしてもMissionを成し遂げることはできない各メンバーが責任感と自主性を持って活動し、Missionを成し遂げるのが、ORD流である。

西根さん
これは、『らでぃっしゅぼーや』時代の私たちに欠けていた意識だと思いました。というのも、ベストを尽くすことで終わってしまったことが多かったと思うんです。自分たちにできる範囲のなかで頑張るというか。

例えば、有機・低農薬の野菜の販売をしているので、天候が悪くて収穫量が足りないとか、収穫が遅れるという時に、「自然だからしょうがない」という考えがどこかあったように思います。

でも、ミッションは「お客さまの食卓に安心で安全な生鮮食品をお届けする」ことで、そういう事態に陥った時に、自分たちはお客さまのために何ができるのかという意識が会社全体として低かったかもしれません。

自分たちのミッションを常に意識して、その実現に向けて、組織を横断したり、時には大胆に軌道修正しながら、徹底的にあがくことの大切さを組織全体に浸透させていきたいです。

──   柴本さんは、いかがですか?

柴本さん
私は「お客さまを裏切れ」ですかね。

3、お客さまを裏切れ(Can’t take my eyes off of customers)

徹底的にお客さまの声を聞き、お客さまの顕在的・潜在的なご要望を客観的に知り、どういう方法でお客さまのご要望をかなえるか、どうやって半歩先のサービスを提供するか、全身全霊で考える。記念日に家族や恋人に贈るプレゼントに仕掛けるサプライズのように、お客さまのご期待を超えるサービスを提供する。

期待どおりのサービスでは満足はしてもらえても感動は生まれない。期待を超え、いい意味でお客さまを裏切ったサービスからのみ、感動が生まれる。

ここでいう「お客さま」は、基本的には当社の商品をご購入頂く消費者の方がメインであるが、時にはお取引さまや自社の仲間たちにあてはめることもできる。お客さまも変化し続ける。昔の成功体験を捨て、常にお客さまの意識の近くにいられるよう、お客さまの声を聞き続ける。お客さまに常に「嬉しい驚き」を提供するのがORD流であり、お客さま一人ひとりの「嬉しい驚き」の積み重ねが、当社の価値であり喜びである。

柴本さん
創業以来、オイシックスでは顧客視点を大切にしてきましたし、これからオイシックス・ラ・大地として、サービスを多くの人に届けようと思うと、絶対に体現し続けなければならない規範だからです。

ORDismで言うところの「お客さまを裏切れ」とは、お客さまの期待していることを理解した上で、それを超えるサービスを提供するということなんですよね。そのためには、何が必要なのか?

お客さまも年齢を重ねるごとに食生活の嗜好が変わっていくし、一方で新規のお客さまの期待にも応え続けないといけない。常に同じものを提供し続けるのではなく、お客さまが求めるものは変わっていくという前提に立ち、サービスを進化させ続けないといけません。

「お客さまを裏切れ」を体現し続けるのは、すごく難しいことなんですけど、オイシックス・ラ・大地らしさとして、打ち立てていかないといけない行動規範だと感じています。

規模が大きくなった組織で、どう根付かせていくか?

──   ORDismの浸透に向けて、部門横断の『ORDism エバンジェリスト』というチームが発足したということですが、このチームではどんな活動をしているのでしょうか?

西根さん
エバンジェリストチームに関していうと、まだ発足して間もないので、現在は試行錯誤しながら様々なことを試しているといった段階です。

10名ほどのメンバーで構成されていて、全社を相手に活動するので、組織や部署に偏りがないように、横断的に選出しています。

現在は、行動規範を体現している社内の活動を表彰したり、イントラネットに行動規範を具体的に理解するためのコンテンツを掲載したり、全社員が集まる場でワークショップを企画していたりします。

──   ワークショップとは、具体的にどのようなことをやるのでしょうか?

西根さん
全ての行動規範を一気に理解してもらうのは無理なので、チームのなかで特にチカラを入れて浸透させたい『強化ORDism』というものを決めて、その理解を促進するためのワークをやっています。

例えば、現在、強化ORDismとして定めているのは『お客さまを裏切れ』です。柴本さんも言っていたように、『お客さまを裏切れ』は実現がすごく難しい行動規範です。そもそも、この言葉の意味をしっかりと理解してもらうことから始めないといけない。

例えば、「お客さま」というと、私たちのサービスを利用している方のイメージがどうしても強くなりますが、場合によっては、社内の人やチームメンバーがお客さまということもあります。まずは、「自分にとってのお客さまは誰か?」を理解することが大切ですし、全ての社員にとって『お客さまを裏切れ』を自分ごととして感じてもらう必要があります。

その理解を深めるために、全社員が集まる場で時間をもらい、お題に対して各自で考え、その答えを社員同士で話し合うワークを実行しています。

──   活動の手応えは、いかがですか?

西根さん
そうですね。手応えを感じることもありますが、それ以上に難しさを感じることの方が、正直多いです。全社で約700名の社員がいるので、その人数に対してコミュニケーションをとっていくのは相当にハードルが高い。

当然ながら温度差もあるわけで、通常業務が忙しくてワークショップに参加できない人もいます。そのなかで、どう温度を高めていくかが、これからの課題です。

ただ、人の行動の意識を変えるのは、時間がかかることですし、難しいことだとはわかっていました。なので、エバンジェリストチームのみんなと腰を据えて取り組んでいきたいと思っています。

ただ食品を販売しているだけの会社で終わらない

──   最後に、おふたりは、ORDismが全社に完全に浸透すると、どのような会社になると想像されていますか?

柴本さん
まずは、規模は大きくなっても、いつまで経っても「やんちゃな会社」という状態でありたいです。

これから事業規模が拡大するにあたって、当然、社員の人数も比例して増えていきます。でも、行動規範に沿った行動を社員のみんなが体現していれば、大企業病に陥らずに済むと思うんですね。

だからこそ、「前例はない、だからやる」や「早いもの勝ち、速いもの価値」といったORDismがお題目だけの規範にならないように、しっかりと文化として定着させていきたいです。

柴本さん
また、ORDismを体現し続けることで、オイシックス・ラ・大地は「食品を販売しているだけの会社ではない」と見られるようになれたらとも思っています。

例えば、ディズニーランドやリッツ・カールトンは、テーマパーク業やホテル業といったイメージではなく、「感動体験を生む会社」というイメージがありますよね。

それと同じように、オイシックス・ラ・大地といえば、「顧客の期待を超える体験を提供する会社」とか、「前例のないことに果敢に挑む続ける会社」とか、何をやっているか以上の言葉で語れられる存在になりたいと考えています。

──   西根さんは、いかがですか?

西根さん
そうですね。やっぱり数年後にはORDismが浸透しきって、「まさにオイシックス・ラ・大地らしい行動だね」と胸を張って誇れるような事例が、どんどん生まれる会社になって欲しいです。

現在、社内でORDismを説明する時に、他社の事例を使いながら話すことが結構多いんですよ。例えば、「お客さまを裏切るとは、こういうことだ」と説明する時に、ディズニーランドの事例を紹介したり。

でも、他社の人たちが「お客さまを感動させる」みたいな文脈で、あるべき行動について考える時に、オイシックス・ラ・大地の事例が引き合いに出されるようにしたいです。

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