オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

入社式があるなら復職式があってもいい。オイシックス・ラ・大地が目指す、ママが働きやすい環境づくり

入社式があるなら復職式があってもいい。オイシックス・ラ・大地が目指す、ママが働きやすい環境づくり

厚生労働省の2017年の国民生活基礎調査では、18歳未満の子どもを育てながら働く「仕事あり」の女性の割合が、はじめて7割を超えました。しかし職場復職できたものの、育児と仕事の両立はできるのか、出産前のようなパフォーマンスを発揮できるのかなど、働くママには様々な不安がつきまといます。

社員の女性比率が65%以上を占めるオイシックス・ラ・大地では、復職ママ社員が働きやすい環境を整えるため、様々な取り組みを行なっています。そのひとつが「復職式」です。

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「おかえりなさい!」の掛け声とともに、復帰部署のメンバーからのメッセージ入りの入社証書ならぬ、“復職証書”の授与を実施する復職式を毎年開催しています。

加えて、復職前後で研修を実施し、子どもの体調不良による仕事の中断や環境変化によるママ自身の体調不良など、あらかじめ想定できる事象に対する心構えや対処法をレクチャーしています。また、上司や同僚向けに「復職者受け入れの心得講座」を開くなど、双方の立場に合わせたプログラムを用意。

これらの取り組みの結果、オイシックス・ラ・大地の育休取得は100%、復帰率もほぼ100%となりました。オイシックス・ラ・大地が目指すママが働きやすい環境づくりの裏側にある想いとは何か。 またママ社員が活躍する環境が整うことで、組織にどんなポジティブな影響が起こるのか。今回、復職支援を推進する人事の鷲尾早紀さんと、Oisixでサービス開発に携わる荒川桃子さんのママ社員2人に話を聞きました。

働くママだからこそ、生まれる顧客視点

──  今日はよろしくお願いします。オイシックス・ラ・大地は働くママが多い会社ですが、オイシックス・ラ・大地のサービスを利用するお客様も働くママが多いですよね?

荒川さん:
そうですね。特に、小さいお子様がいるお客様が多いです。

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(右)荒川桃子さん。2013年に仕事と育児を両立できる職場を求めて、旧らでぃっしゅぼーやにキャリア入社。現在はOisixのサービス進化室にて、『ちゃんとOisix』をはじめとした働く女性向けのサービスの企画を担当。7歳と3歳の子供を持つママ。

(左)鷲尾早紀さん。2009年に母親の病気をきっかけに、ちゃんとした食を広めたいと思い、旧大地を守る会へキャリア入社。現在はオイシックス・ラ・大地の人材企画室で採用や社員育成などを担当。6歳の男の子のママ。

荒川さん:
とはいえ、各家庭ごとに食へ求める事情は変わります。仕事で買い物や料理の時間が充分に取れない家庭には、短い時間でおいしい料理が作れるKit Oisixが好評です。

一方、「おいしい野菜が食べたい」「他にない珍しい食材を試したい」という目的で利用してくださるお客様も多くいらっしゃいます。このような方々に共通するのは、⾷材を美味しく調理し、上⼿に使い切りたいけれど、レシピのパターンが思い浮かばず、献立がマンネリ化してしまうという意見でした。

そこで誕生させたのが、3日分もしくは5日分のカットされていない食材とレシピがセットになって届くちゃんとOisixです。レシピ通りに調理することで、届く食材を上手に使い切りながら、様々なメニューを楽しめます。

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荒川さん:
このように、ただおいしい食材を届けるだけでなく、ご家庭それぞれの事情に合わせたサービスを生み出し、「毎日の料理が楽になった」「日々の食卓が楽しくなった」と思ってくださる方を増やしていくのが私たちの仕事です。

こういったお客様視点のサービスを届けていくために、社内にママ社員が多いことは大きな強みになっています。やはり同じママだからこそわかる悩みってありますし、アイデアを考える際にママ視点が活きていると感じる瞬間が多いですね。

子育てと仕事の両立をサポートするために

──  お二人とも、復職を経験されてますよね。やはり、慣れない子育てと仕事の両立は大変でしたか?

荒川さん:
そうですね。振り返ってみても、復職をした時は、ものすごく大変でした。保育園からの呼び出しがいつ来るかわからなかったり、予想外のことが次々と起こります。

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荒川さん:
今、私の所属するチームは全員お母さんで、育児休暇を終え、フルタイムでの職場復帰を果たす女性は増えていますが、仕事と育児を両立できるか、職場に馴染めるか、復職にはさまざまな不安がつきまといます。

そんななか、オイシックス・ラ・大地の復職率はほぼ100%。特徴的な取り組みのひとつに、鷲尾さんたち人事が企画してくれる『復職式』があります。復職式では配属先になる部署の上長から復職証書の授与が行われ、復職証書には配属部署のメンバーからのメッセージも書き込まれています。

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2020年の復職式はオンラインで実施。復職者には、復職証書に加えて野菜ブーケも贈られました。

荒川さん:
加えて、復職が決まった社員には復帰前に、仕事内容や課題を整理するワークショップなどの『復職前研修』が実施されます。これらの制度により、復職後の働き方のイメージを持って復職を迎えられます。同時に、会社から復帰を望んでもらえていることも伝わるので社員から好評です。

また、子育てと仕事を両立していくなかで、柔軟性のある働き方を会社が支援してくれるのがありがたいですね。

例えば、新型コロナウィルス対策による臨時休校の際に、実家に子どもを預ける社員の交通費を負担してくれたり、オフィスに子どもを預けてられるようにしてもらえたり。また、「細切れリモートワーク」と称して、自宅で子どもの世話をしながら働く社員向けに、時間を短く区切りながらリモートワークをしてもOKという制度もはじまりました。

社長自らが「無理しないで」と伝える意味

──  そもそも、復職式や復職前研修などの復職支援制度は、どういう背景から生まれていったんですか?

鷲尾さん:
これらのプログラムは、人材企画室の柴本さんが自身の出産後に復職した際に感じた苦労や反省を踏まえて、3年前に企画したことがはじまりです。

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鷲尾さん:
もともとオイシックス・ラ・大地では復職する女性の方は多くいましたが、以前は受け入れを現場任せにしていました。それだと受け入れ方法がバラバラになってしまうし、何より「戻ってきてくれて、ありがとう」というメッセージを会社としてキチンと伝えたいと思いました。

──  復職式では社長の宏平さんがスピーチをすると聞いてますが、どんな内容を話されるんですか?

鷲尾さん:
宏平さんからは「期待している」と前置きした上で、「ただ、復職後の数ヶ月はあまり無理はしないで」という内容を話しています。

実は復職後に頑張りすぎてしまうケースって少なくないんです。仕事と家庭の両立をちゃんとやっていけることを周囲に証明したい気持ちが強く出すぎてしまって、かえって調子を崩してしまうんですね。100点を求めてモヤモヤするのではなく、まずは同僚や家族とコミュニケーションを取りながら、仕事のペースをつかむことが大切です。

昨年の復職式の宏平さんのスピーチでは、育休中に向き合ってきた家族の在り方や経験は、仕事に大いに役立つと話した上で、「上手くいく人は諦め上手。家庭との両立も仕事も楽しんでください」という言葉で締めくくってくれました。

社長から「無理をしないで」と言葉をかけられたことで、気持ちが楽になったという参加者の声がとても多かったです。

同じ壁でも、わかってぶつかる壁は全く違う

──  3年前と比べて、復職支援制度は充実してきている実感は強いですか?

鷲尾さん:
プログラムの内容は毎年見直しをしていて、どんどん充実してきてますね。ただ、復職は復職者だけの問題ではなく、一緒に働く上司や同僚の理解が大切です。そのため、今後は復職者の周囲に対するプログラムも充実させていきたいと考えています。

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鷲尾さん:
例えば、オイシックス・ラ・大地へキャリア採用で入社される方には、入社前に配属先の上長がキャリアプランを作り、入社後に本人を交えて役割やミッションの共有を行なっています。それを復職においても実施したいと思っています。例えば、オンラインで、復職者と直属の上長と人事で三者面談を行うなどして。

また、もうひとつ新しくやりたいのが、はじめて復職者をメンバーに持つ現場の上司向けの研修です。

──  確かに、子育て経験のない人には、育児と仕事を並行することの大変さの理解が難しいですからね。

鷲尾さん:
どこかで教えてくれるわけでもないですからね。働くお母さんは、どういう部分に困るのか?どういうコミュニケーションをとったほうがいいのか? 特に男性はわかりづらいですよね。

オイシックス・ラ・大地には復職を経験しているお母さんが大勢いるので、社員からも声を集めて、どういう部分に気をつけるべきかを上司の方々にお伝えしたいと思ってます。

とはいえ、どんなにプログラムを充実させても個別のトラブルは消えません。ただ、「わからないでぶつかる壁と、わかってぶつかる壁は全然違う」と思うんですね。研修を経たことで共通認識が生まれ、「今、研修でやったような状態になってるよ」「これがあの研修で言っていたことか」とお互いに指摘し合うことで、自分自身を客観的に捉えられるようになると思います。

働き続けたいと思う人の背中を押していく

──  働き方改革により、女性の活躍が推進され、子育てと仕事の両立を目指すワーキングマザーが今後一層増えると思います。おふたりのこれからの展望を最後に聞かせてもらえますか?

荒川さん:
私たちのサービスを通じて、多くの女性が働きやすくなる社会を目指していきたいですね。私にとって、働くお母さんは全員「戦友」だと思っているので。

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荒川さん:
私自身がママをやっているので、働くお母さんの大変さを理解すると同時に、ママだからこそ得られる幸せもわかっているつもりです。ママは楽しいですよ!でも、頼るべきところは頼って、うまくやりくりをしていかないと苦しくなってしまう…。みんな、そうやって仕事と家庭を両立しているので、私から見ると戦友なんですよね。

だから、戦友たちを助けられる商品やサービスを届けることに、強くやりがいを感じています。 これからも、様々な悩みに寄り添っていけるサービスを開発していきたいです。

鷲尾さん:
私も、子育てをしながら女性が働ける環境づくりにより注力していきたいと思ってます。また、働く女性に限らず、「ずっとここで働き続けたい」と思ってくれる社員が働き続けられる環境を築いていきたいです。

例えば、ある程度の年齢になると介護と仕事の両立が大きな課題になったり、ライフステージの変化で様々な転機が訪れます。そういう時に、会社としてどうサポートしていくのか。これから、人生100年時代になり長期間働く人が増えるなかで、そういった課題が今後増えてくるはずです。

社会の変化の先を見据えて、会社としてのあり方も、提供する商品やサービスのあり方も、進化していくことが大切になってくると考えています。それが「これからの食卓、これからの畑」に繋がってくると思います。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部

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