オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

Oisix香港、創業以来の大ブレイク中。食習慣もEC文化も全く違う香港での挑戦

Oisix香港、創業以来の大ブレイク中。食習慣もEC文化も全く違う香港での挑戦

「これからの食卓、これからの畑」を理念に、Oisix ra daichiでは食にまつわる様々な事業を展開しています。その事業範囲は日本国内に止まらず、海外にも広がっています。今回は、食品宅配サービス『Oisix』の最初の海外展開先であり、現在急成長を続けている『Oisix 香港』を紹介します。

昨年末、Oisix 香港は、香港で最も価値のある企業賞である『Most Valuable Comapanies Awards in Hong Kong 2020』を受賞しました。2014年、2017年に続き、3回目の受賞となります。提供するオンライン・プラットフォームが香港で信頼され、長年に渡り品質の高い食品を提供してきたこと。また、食材の新鮮さを保ちながら時間通りに配送できていることなどへのサービスレベルの高さが大きく評価されました。

(▲)写真左が、Oisix Hong Kong 董事長の高橋 大就

2009年より事業を開始したOisix 香港は、現在、そのサービスの利用者数や売上を大きく伸ばしています。メディアに取り上げられることも増え、「安心安全な食品宅配サービスといえば、Oisix」と言われるまでに成長してきました。

ただ、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。食習慣はもちろん、ネット通販への理解も日本とは全く違う香港。「わざわざ食材をネットで注文する意味がわからない」と言われた状態から、どうやって香港の人たちに受け入れられるサービスに育ててきたのか?今回の記事では、香港事業チームの関谷潤平さん、武正裕さん、香港出身メンバーのCharmaine Leeさんに、香港での取り組みについて話を聞きました。

海外展開先を香港に選んだ背景

──  現在、Oisixは上海を拠点に中国でも事業展開をしていますが、香港のほうが歴史は長く、2009年から事業開始していますよね。数ある国のなかで、香港を選んだ背景とは何だったのでしょうか?

武正さん:
Oisixでは創業当時から、「豊かな食生活を、できるだけ多くの人に」という理念を掲げていました。そして、できるだけ多くの人とは、日本国内に限った話ではなく、世界の人を意味しています。創業当初は、国内を拠点に運営するのが精一杯でしたが、業績が安定してきた頃から、海外へと目を向けていました。

海外の中でも、香港からスタートしたのは、いくつか理由があります。まずは各国の食品輸入に関する規制の問題です。国ごとに定められた輸入規制や関税など、さまざまなハードルがあり、特に食産業は衛生の観点や自給率の観点から厳しい規制を定める国が多数あります。ただ、自由貿易港である香港は、関税がかからず、比較的容易に食品を輸出することができました。

また、香港には日系の百貨店やスーパーがあり、『大戸屋』など行列ができるほど人気の飲食店もあります。日本のことが大好きな香港人の方も多く、日本食も大人気です。このような好条件もあり、香港はOisixの最初の海外進出先に選定されました。

武正裕さん
海外事業部 海外事業開発セクション マネージャー。06年に入社。カスタマーサポートや物流センターなどのセンター長をつとめ、17年から海外事業部へ。中国事業の立ち上げに携わったのち、現在は、海外向けの商品開発、現地企業とのアライアンス、輸出や現地の物流を担当するチームをマネジメントする。

関谷さん:
加えて、世界に豊かな食生活を広げるという視野で考えた時に、日本から距離が近くて、人口の多い中華圏にOisixを広げていく展望が創業間もない頃からあります。

2017年より、Oisixでは中国法人を設立し、上海を拠点にサービスを開始しています。そのテストマーケティング的な意味合いで、Oisixの商品や定期宅配モデルのサービスが中華圏の方々に受け入れられるかを学ぶことも、香港事業に寄せられる期待のひとつでした。

とはいえ、香港と中国では、食習慣はもちろん、文化や考え方は違います。売っている商品やサービスは国ごとの事情やニーズに合わせて、それぞれ事業展開しています。

わざわざネットで野菜を買う理由がわからない

──  2009年にはじまった香港事業は、これまで苦労の連続だったと聞きます。具体的に、どういう部分に難しさがあったのでしょうか?

武正さん:
そもそも、香港の人たちはネット通販をあまり利用しないことで知られているんです。

香港は自由貿易のため関税や消費税がなく、言わば街全体が巨大な免税店のような状態です。世界中の商品が香港に集まり、店頭の棚を煌びやかに彩り、香港は昔から「買い物天国」と称されてきました。

そして、国の面積は東京の半分くらいで、人口は約750万人。東京都よりも高い人口密度です。多くの市民が中心街から30分以内の距離に住んでいて、すぐに買い物ができる生活環境のため、わざわざネットで商品を調べて注文する必要がないんですよ。

また、香港では狭い土地に多くの人が住んでいるため高層マンションが立ち並びます。そのため、配達効率が悪く、配送コストがかかります。事業者側でもネット通販に積極的でなく、それもネット通販の利用が広がらない要因のひとつになっています。

関谷潤平さん
海外事業部 サービス運営セクション マネージャー。07年、武正さんに紹介されて入社。カスタマーサポートのセンター長などを経験したのちに、13年から海外事業部へ。現在は、香港向けのネット通販サイトと、香港事業全体のオペレーションとカスタマーサポートのマネジメントを担当。

関谷さん:
こういった背景から、はじめは香港の方々にOisixを日常生活で利用いただくことは少ない状態でした。当初、売り上げの上位を占めていたのは、抹茶のお菓子やチーズケーキといった日本のお菓子です。日本のお菓子は香港でも人気なので、主にギフトとして購入されていました。

一方、香港には日本から家族で駐在されている方々が多く住んでいます。「香港でも、家族に日本の安心安全な食品を食べさせたい」と考える現地の日本人の方々に、Oisix 香港の商品は人気でした。サービス利用者の割合でいうと、香港の方々より駐在日本人の方々のほうが圧倒的に多い状態が長く続きましたね。

ただ、現在は、香港の方々に普段使いの食材を揃えるためのサービスとして広がってきました。売上上位の商品も、卵や牛乳や野菜といった毎日の食卓で使用するものとなり、「豊かな食生活を、できるだけ多くの人に」という私たちのやりたかったことに近づいてきている実感があります。

お客様のニーズに合わせて、愚直に改善を繰り返す

──  香港の方々にOisixのサービスを受け入れていただくにあたり、どういう点を意識されてきたのでしょうか?

武正さん:
特に意識したのは、わざわざネットで購入いただく理由をしっかり作ることですね。

例えば、香港や中国では生卵のまま食べる習慣はなく、卵には必ず火を入れてから食べるんです。日本では生卵を食べますが、これは日本産の卵が新鮮であり、世界一厳しいと言われる品質管理の体制が整っているからです。このギャップに注目し、生卵のままご飯にかけても美味しい日本産の卵の魅力を訴求することで、香港の方々に興味を持っていただくキッカケにしました。

加えて、香港の方々の食生活のニーズに合わせた売り場づくりも積極的に実施しています。最近では、香港では麺類の人気が高いので、日本の美味しい麺商品を販売する売り場を用意したところ、大変好評をいただいています。

Charmaineさん:
あと、Oisixが香港で人気になった理由のひとつは、新鮮な野菜です。香港の人たちは、野菜の素材そのものが美味しいという感覚はあまり持っておらず、野菜とは調理によって味付けをして食べるものだと思っている人が多いんです。

でも、Oisixの野菜と出会って、素材そのものの美味しさをはじめて知ったという声を沢山いただいています。私自身も、その一人です。日本のOisixでも人気の『益荒男ほうれん草』を初めて食べた時、味付けせずに食べても甘いことに衝撃を受けました。

Charmaine Leeさん。
海外事業部 サービス運営セクション リーダー。16年にOisix Hong Kongに現地採用で入社。18年より、日本で働くことになり、現在は関谷さんのチームで、主にWebサイトへの商品登録などのオペレーションや、香港現地メンバーとの連携を担当。香港出身メンバー初のリーダー職を担う。

関谷さん:
こういった商品の価値訴求に合わせて、裏側ではオンライン・プラットフォームの基盤を刷新したり、日本から輸出する食品・食材を定温管理できる倉庫のキャパシティを増強したり、カスタマーサポートを充実させるなどのインフラ面の拡充も進めてきました。

今年に入り、香港も新型コロナウイルスの影響を受けていますが、Oisix 香港はサービスを一度も停止していません。多少の遅延はあったにせよ、毎日の食生活を支える存在として、お客様のご自宅に必ず商品をお届けしてきました。これまでの改善の積み重ねの賜物だと感じています。

香港と日本でワンチームであることが最大の強み

──  成長を続けている香港事業ですが、チームメンバーのほとんどは日本で働いていますよね。どうやって、現地の需要を把握したり、変化対応をされているのですか?

武正さん:
現在、香港事業に関わっているメンバーは総勢20名程度ですが、そのほとんどは基本的に日本で働いています。現地に常にいるのは数名で、全員が香港で採用した香港人のメンバーです。彼らが、カスタマーサポートや配送などのオペレーションを担ってくれています。

現地の需要や状況を把握する点でいうと、私たちも渡航できる時期は香港へ足を運び、時にはお客様のご自宅を訪問させていただき、現地の食習慣がどういうものかを自分たちの目で確かめています。また、スーパーで売られている食材や売り場も見て回ります。

ただ、現地のことは、現地のメンバーが一番詳しいですし、日本人の私たちでは気づけないことを汲み取ってくれます。最近は、オンラインで積極的に現地の状況を随時共有してくれていて、それがサービス開発で大いに役立っています。現地のメンバーがチーム内にいるのは、事業を展開する上で大きな強みになっていますね。

Charmaineさん:
私は、今は日本のOisix ra daichiで働いていますが、はじめは現地採用でOisix Hong Kongに入社しました。チームの中では、香港と日本を繋ぐ役割を担っています。

働いていて感じるのは、マネージャーの関谷さんや武正さんをはじめ、日本のメンバーが私たちの意見にすごく耳を傾けてくれることです。香港のメンバーは20代が多いのですが、若いメンバーの声もしっかりと聞いてくれます。そして、フラットな関係を作ってくれているので、何でも話しやすいです。頼ってもらえていることを感じますし、その期待に応えたいと自然と思うようになりました。

関谷さん:
どうしても肌感覚や文化などは、日本人の私たちではわからないところがありますからね。そこは、現地のメンバーに頼らざるを得ない部分でもありますし、現地のメンバーが本当によく補ってくれています。

例えば、商品の魅力を伝えるにしても、現地の人たちが興味を持つ表現を使わないと届きません。商品情報の翻訳をはじめ、新サービスを立ち上げる時は一緒にネーミングを考えてもらったりと、様々なシーンで活躍してもらっています。何か企画のアイデアがあるときは、まずは香港現地のメンバーに相談する風土がチーム内にできつつあります。

すべては世界に豊かな食生活を届けるために

──  最後に、3人から香港事業の今後の展望について聞かせてください。

関谷さん:
現在、香港は様々な変化が起こっていますが、これからも香港の方々の毎日の生活に寄り添っていきたいです。

そのためには、お客様の声をしっかり聴くことが第一で、お客様が求めている豊かな食生活の実現に向けて、自分たちを変化させていくことが大事だと考えています。現地のメンバーと連携を取りながら、より支持されるサービスへと成長させていきたいですね。

Charmaineさん:
私の立場でいうと、香港と日本のチームのつながりを作るのが私の役割なので、それをしっかりとやっていきたいです。

また、香港で日本は本当に人気があります。特に、アイドルやアニメなどのサブカルチャーの人気は根強く、日本好きが高じて、日本の食に興味を持つ人も増えています。そういう方々に、Oisixを通じて、日本の食材・食品が持つ美味しさを広めていきたいです。

武正さん:
まずは、香港で名実共に「安心安全で美味しい食品宅配サービスといえばOisix」という不動の地位を築いていきたいです。そして、香港で得た経験は、他の国でのこれからの事業展開にも必ず活きてくるはずです。

すべては世界に豊かな食生活を届けるために。これをスローガンに、これからもOisix ra daichiの海外事業部は挑戦していきます。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部

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