オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

「食のあらゆる領域を、テクノロジーによって変革していく」──オイシックス・ラ・大地が目指す食のデジタル化

「食のあらゆる領域を、テクノロジーによって変革していく」──オイシックス・ラ・大地が目指す食のデジタル化

かつてソフトウェアエンジニアであり、現在は著名な投資家として知られるマーク・アンドリーセン氏が2011年に発表した”Why Software Is Eating The World“。この手記では、これまでテクノロジーと関わりが薄いと思われていた様々な産業が、成長著しいソフトウェア企業の登場によって創造的破壊がもたらされることを予期していました。

事実、AmazonやNetflixなどの登場により、私たちの生活習慣は大きく変わり、それ以前の生活に戻ることは想像がつかないくらいです。そして、このテクノロジーによる創造的破壊は食のあらゆる領域にも起こるであろうと、オイシックス・ラ・大地でシステム本部 本部長を務める大木聡さんは言います。

また、食のサブスクリプションビジネスのパイオニアであるオイシックス・ラ・大地は、テクノロジーによる食の変革をリードする存在になれるとも言います。オイシックス・ラ・大地が目指す食のデジタル化の未来とは何か。大木さんに話を聞いてみました。

食のあらゆる領域が、変革のど真ん中にいる

── 現在、フードテック分野への投資熱が高まるなど、「食×テクノロジー」への注目が世界的に高まっています。この背景を、大木さんはどう見ていますか?

大木さん:
まずはグローバルレベルの社会課題がありますよね。人口爆発による食料危機、環境問題、少子高齢化により社会保障制度システムが崩壊する危機感。また、健康の分野では「治療から予防へ」という考え方が広まり、食習慣の改善によって健康寿命を伸ばそうとする動きが進むなか、テクノロジーを活用した変革が求められています。

また、ナチュラルやオーガニックといったキーワードに敏感なZ世代を代表とする人たちが、アニマルウェルフェアや環境負荷の観点から、フードテック分野への注目を高めています。既に欧米では代替食材やヴィーガン食の普及がかなり進んでいますよね。

そして、近年、注目度が高まっているのが「食のデジタル化」です。料理や食材に含まれる塩味や甘味などの味覚情報が、センシング技術の発展によりデータベース化できるようになり、食のあり方を変える研究や技術開発が広がっています。

大木聡さん。
執行役員 兼 システム本部・本部長。飲食業界にいながらプログラマーを兼業後、外資の半導体企業アドバンスト・マイクロ・デバイセズに入社。その後も米国、ヨーロッパ、アジアと拠点を移りながらシスコシステムズに入社。人事、経理以外の仕事はほとんど経験する。アマゾンジャパンでは小売事業の事業本部長を経験後、直近はAlexaに関わるCXを統括。アジア・パシフィックのリージョナルディレクターとしてエンジニアとプロダクトマネジメントのチームを率いる。

大木さん:
例えば、子どもの偏食をなんとかしたいと思っているご両親がいたとします。味覚のデータベースを持っていれば、お子さんの好きな料理から味覚の傾向を把握し、「苦手な食材を使用しても、この食材と組み合わせ、こうした調理方法をすれば、好みの味覚を再現できます」と、偏食を楽しく克服できる提案ができるわけです。

この食のデジタル化は、食育をはじめ、様々な領域における課題解決に応用できるはずです。例えば、病院食や介護食。3Dフードプリンターの登場で、必要な栄養素にあわせてパーソナライズ化した食事を提供できる時代が訪れようとしていますが、一人ひとりの味覚の好みに合わせた食事も届けられるようになるはずです。

人間が生きていく中で、毎日の食は欠かせないものです。健康でありたいというニーズもある一方で、出来るだけおいしいものを食べたいといったニーズもあります。それら複数のニーズを同時に満たすために、食のデジタル化は極めて重要な役割を果たすでしょう。

食の世界におけるNetflixやSpotifyになる

── 食のデジタル化の流れが世の中全体で進むなかで、オイシックス・ラ・大地はどういう存在を目指していきたいですか?

大木さん:
オイシックス・ラ・大地の強みが何かを考えると、サブスクリプションビジネスをするなかで、消費者であるお客様とダイレクトに繋がっていることだと思います。要は、お客様が食に何を求めているのかというデータを我々は大量に蓄積しているわけです。

そのお客様のデータベースに栄養や味覚のデータベースを掛け合わせ、機械学習などのテクノロジーを駆使することで、様々な価値を創出できるはずです。

例えば、商品のレコメンデーションの精度は今より大きく変わるでしょう。これまでは過去の購買結果などの行動履歴をもとにレコメンドしていたのが、お客様の味覚にあわせたレコメンドをできるようになります。「あまり馴染みはないかもしれませんが、実はこの料理もお客様の好みにあうはずです」と食生活を豊かにするサポートができます。

大木さん:
更に、お客様のほうで「塩分控えめでもおいしい食事」や「低カロリーだけど満腹感のある食事」といった求めるライフスタイルを選択していただくと、それにあわせた献立メニューを提案できるようにもなるでしょう。健康寿命を高めていきたいというニーズが社会全体で高まるなかで、こうしたサービスは確実に必要とされるはずです。

こうしたテクノロジー環境は商品開発にも活かすことができます。特定の旨みを生み出す組み合わせを膨大なデータの中から抽出することで、レシピ開発者の知識や経験の枠組みを超えた着想を得ることが可能です。また、売れ筋の商品からお客様が好む味覚の傾向を読み取り、その味覚を楽しむことのできる商品ラインナップを増やすこともできます。

提供できる商品の選択肢を増やし、お客様の嗜好やニーズにあわせたレコメンデーションの精度を向上させる。まさに映像や音楽の世界でNetflixやSpotifyなどが実現していることですね。オイシックス・ラ・大地であれば、こうした変革を食の世界にもたらすことができるはずです。

アライアンスの可能性も無限に広がる

── オイシックス・ラ・大地はアライアンスを組んだ事業開発にも取り組んでいますが、食のデジタル化により、アライアンスの可能性も広がりそうだと感じました。

大木さん:
そうですね。例えば、健康への意識の高まりから、日々の健康状態を見える化するためにIoTデバイスを装着する人が増えていますよね。そうした健康データを持っているパートナー企業と組むことで、健康データに基づいた献立提案と、その献立に必要な食材をセットでお送りするサービスが実現できるかもしれません。

最近だと、トイレにセンサーを取り付けて、便座に座るだけで様々な健康状態をチェックできるスマートトイレも登場していますよね。このようなIoTデバイスの開発は、様々な企業が力を入れているので、今後もたくさん登場するでしょう。そう考えると、アライアンスの可能性は無限に広がっていると感じます。

大木さん:
また、食や健康に関する様々なデータを保有し、AIや機械学習などのテクノロジーを活用していくことで、需要予測の精度を高めていきたいと思っています。

現在、フードロスが深刻な社会問題になっていますが、原因のひとつが需要と供給のミスマッチです。蓄積された過去の販売実績のデータに、販売動向に影響を与えるであろう気象情報などのデータや、お客様が求める食の傾向などのデータを掛け合わせて解析することで、需要予測の精度を最大化することができるはずです。

オイシックス・ラ・大地はサプライチェーン全体でフードロスゼロの実現を目指していますが、テクノロジーの活用は欠かせないと感じています。また、こうした仕組みや技術はオイシックス・ラ・大地社内だけで活用するだけでなく、他社にもソリューションとして提供し、社会全体の課題解決に貢献できたらとも考えています。

食の様々な社会課題に対して、一社単独で全てを解決をしていくというのは不可能です。自分たちの強みを磨きながら、様々なパートナー企業と共同開発や共同研究することで、事業ポートフォリオを広げていく。そうした動きを加速させていきたいですね。

数年以内に具体的なアウトプットを出していく

── オイシックス・ラ・大地の目指すビジョンを語ってもらいましたが、実現したい未来に対して、現状はどのような状態でしょうか?

大木さん:
現状は、今日話したようなことを実現するための下地を整えている状態ですね。

振り返ると、私は2020年12月にオイシックス・ラ・大地に入社し、システム本部長に就任しましたが、当時は開発におけるガイドラインがエンジニア全体で統一されていない状況でした。オイシックス・ラ・大地は異なる三つの異なる会社が経営統合して生まれた会社ですので、そうした背景が影響していたのかもしれません。

そのため、様々な部門のメンバーとコミュニケーションを取りながら、エンジニアリングをどう組織に活かしていくかというグランドデザインを描き、開発やチームのあり方を見直すことから始めました。課題は山積しているものの、開発のガイドラインやフローの整備が進み、開発工数の効率化に加え、トライアンドエラーがしやすい環境が整いつつあります。

大木さん:
現在、今回話したようなビジョンを1日でも早く実現するために、社内では様々な取り組みが進んでいます。そのなかで、我々のビジョンに共感し、入社してくれたメンバーたちが既に大きな力となってくれています。

例えば、今年4月にデータサイエンティストとして入社してくれた中野さん。これまでは部門ごとにデータがバラバラに管理され、整理されていない状態で、社内横断で一元的にデータを活用できる体制をつくる必要がありました。現在は彼が中心となって、データマネジメントオフィスの立ち上げを推進してくれています。

また、システム基盤やアプリケーションを刷新し、会社全体のパフォーマンスを向上させるDX(デジタルトランスフォーメーション)改革を現在進行していますが、この全社横断プロジェクトでも新しく加わったメンバーたちが存在感を発揮してくれています。

なので、現状は下地を整えている状態と言いましたが、今日話したようなことの実現は遠い未来だとは考えていません。下地を整えつつ、並行して実験的なプロジェクトを重ね、数年のうちに何かしらの具体的なアウトプットを世の中に出していきたいです。

自ら未来を創っていこうとする人と働きたい

── これからの可能性をとても感じる話を聞かせていただきましたが、最後にオイシックス・ラ・大地で一緒に働きたいエンジニア像について話を聞かせてもらえますか?

大木さん:
繰り返しになりますが、グローバルレベルの社会課題や健康意識への高まりによって、社会全体の食への意識が大きく変わろうとしている時代の転換点に我々は立っていると思うんですね。現に、この領域にはスタートアップからグローバル企業まで様々なプレーヤーが続々と参入してきています。

そうした激動の時代において、食のサブスクリプションビジネスのパイオニアであるオイシックス・ラ・大地は、テクノロジーによる変革をリードする存在になれるポテンシャルを秘めていると思います。

なぜなら、こんなに食に関する膨大なデータを保有し、多くのお客様や生産者と繋がっている存在はないからです。また、本気で食の未来を自分たちの手で創っていこうとする気概のあるメンバーたちが揃っています。

自分のエンジニアとしてのスキルや経験を磨き、世の中にインパクトを与えるものを自分の手で生み出したい。自分の才能を、ポジティブに社会に還元したい。そうした気概と情熱を持っている人に加わってもらえると嬉しいですね。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部


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