オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

1年間で累計25万食を突破。日本でヴィーガン食の「おいしさ」を伝えるPurple Carrotの挑戦

1年間で累計25万食を突破。日本でヴィーガン食の「おいしさ」を伝えるPurple Carrotの挑戦

「これからの食卓、これからの畑」を理念に、オイシックス・ラ・大地では食にまつわる様々な事業を展開しています。今回は、「時々ヴィーガン」という新しい食生活のスタイルを提案するヴィーガンミールキットブランド『Purple Carrot(パープルキャロット)』を紹介します。

2014年に生まれたPurple Carrotは、アメリカ本土48州を対象にヴィーガン食のミールキットを定期宅配で届けてきました。その後、2019年4月、Purple Carrotを展開するThree Limes, Incの株式を、オイシックス・ラ・大地が100%取得し、子会社化することを発表しました。

そして、2019年10月末より、Oisixのお客様に向け、日本では初となるPurple Carrotのミールキットの販売を開始。2020年8月の時点で、40を超える日本オリジナルのヴィーガン食メニューを開発し、累計販売食数は25万食を超えるなど、着実に支持を広げています。

とはいえ、日本ではヴィーガン食への関心はまだ低く、欧米のようにヴィーガン対応をしているレストランもまだ少ないのが現状です。

どうやってヴィーガン食の価値を多くの人に訴求していくか? 今回の記事では、Purple Carrotチームの尾花美咲さんに、ヴィーガン食やPurple Carrotの取り組みについて話を聞きました。

尾花美咲さん
2019年4月にキャリア入社。学生時代に栄養士の勉強をし、新卒で食品メーカーに就職し、自社ブランドの広報や店舗開発などを担当。その後、オイシックス・ラ・大地の食の社会課題をビジネスで解決するという社会性に惹かれ入社。食の仕事が好きで、ラーメン屋からアイスクリーム店まで、様々な業態の飲食店でバイト経験あり。

ヴィーガンへの関心が、なぜ世界中で高まっているのか

ーー 現在、海外ではヴィーガンへの注目が増え、特にアメリカではセレブやアーティストがヴィーガンであることを公言するなど、大きなムーブメントになっています。この背景は何なんでしょうか?

尾花さん:
理由のひとつは、環境保護の観点によるものです。ヴィーガンとは、肉・魚・卵・乳製品などの動物性食品を摂取しない人やライフスタイルのことを意味しますが、ヴィーガン食の普及により肉の消費量を減らすことで、畜産業により発生する大量のメタンガスの抑制が期待できるからです。

また、畜産業は地球温暖化問題だけでなく水不足問題にも関わっています。畜産業は果物や野菜の生産と比較し、大量の水を必要とします。2030年には水需要に対して水資源が40%不足すると言われている現在、水資源の管理は持続可能な発展のために重要な課題です。

SDGs(持続可能な社会を実現するための目標)の広がりもあり、地球温暖化対策や水の使用量を減らすため、肉食中心の生活から脱却しようとする機運がアメリカをはじめ世界各地で高まり、ヴィーガン食への関心が一気に高まっています。

尾花さん:
環境保護の観点に加えて、健康な食生活への関心の高まりも、ヴィーガン食が注目を浴びる後押しになっています。Purple Carrot創立者のAndyも、自らが病にかかった際、健康的な食のあり方を考えるなかで、ヴィーガン食の重要性に着目しました。

とはいえ、ヴィーガン食を生活に取り入れている人の多くは、全ての食事をヴィーガンにしているわけではありません。なかには完全菜食主義者と言われるようなストイックな方々もいますが、食生活の一部を置き換えるなど、フレキシブルにヴィーガンを取り入れている人がほとんどです。

アメリカでのPurple Carrot利用者も8割以上は、週末だけヴィーガンや、夜だけヴィーガンなど、自分のライフスタイルに合わせた食生活を楽しんでいる「時々ヴィーガン」の人たちです。気軽にヴィーガンを取り入れられるミールキットとして、Purple Carrotを愛用いただいています。

Purple Carrotの最大の売りは、おいしさ

ーー 海外と比べると、日本ではヴィーガン食への関心はまだ低い状態です。尾花さんたちが、Purple Carrotをお客様に提供するうえで特に意識してきたことは何ですか?

尾花さん:
それは、お客様に「Purple Carrotのミールキットは、おいしいし、体に優しい」と評価いただくことですね。環境に優しいという面も訴求していきたいですが、まずは純粋に「ヴィーガン食を生活に取り入れたい」と思っていただくことを意識してきました。

そのなかでも、「おいしさ」には一番こだわっています。ヴィーガン食の経験がないお客様がほとんどなので、はじめて食べたメニューがおいしくないと感じてしまうと、ヴィーガンそのもののイメージに大きな影響を与えてしまいます。「ヴィーガンは環境には優しいけど、美味しくはない」と思われることだけは、絶対に避けたいと思っていました。

そのために、ミールキットのメニューのほとんどは日本のお客様の好みや食卓事情にあわせて、日本オリジナルで開発しています。Purple Carrotが定めるヴィーガン食の規定を守ったうえで、『Kit Oisix』を担当してきたメンバーを中心に、どんなメニューがヴィーガン食の魅力を伝える上でふさわしいかを考えながら開発しています。

尾花さん:
加えて、ミールキットに使用している食材は、Oisixで契約している生産者さんのものなので、素材にもかなりの自信があります。調味料に関しては、日本市場にないものを使用していることも多いので、Oisixで付き合いのあるメーカーに相談し、Purple Carrot用に開発していただきました。

また、Oisixのお客様は健康的な食生活に関心が高い方が多いので、「野菜を使って、こんなレシピも作れるんだ」と新鮮な驚きを提供できたらとも考えています。そのため、名前を聞いただけでは、味が想像ができなメニューを多く用意しています。『照りマヨサラダ丼』とか、『ベトナム風水餃子』とか、味の予想がつかないですよね(笑)。

実際、お客様からの声として一番多いのが、「おいしい」という評価です。動物性食品を使わず、野菜を中心としたレシピで、こんなにおいしいメニューが作れるのかと、嬉しい反応をいただいています。これまでメインディッシュといえば、肉か魚という選択肢だったのが、野菜を中心にした食卓でも満腹感が味わえることに驚いていだけているようです。

共通の想いを持つ方々と一緒にヴィーガンを広める

ーー また、今年8月には、サステナブル・グリルレストラン『The Burn』の米澤文雄シェフ監修によるミールキットを販売しました。

尾花さん:
米澤シェフの『The Burn』は、炭火で焼き上げる肉料理が看板メニューでありながら、ヴィーガン食のコースも展開していて、お客様から絶賛されています。肉料理が好きだからこそ、そのおいしさを享受できる未来を残せる提案をしたいと考えた結果、ヴィーガン食をメニューに加えたと聞いています。

米澤シェフは「週3で食べていたお肉を週2にし、他の日は野菜の日にする。無理のない程度にヴィーガンを楽しむことで罪悪感なく、お肉を食べる生活が続けられる」と話されていて、Purple Carrotが提案したい「時々ヴィーガン」のコンセプトと共通の想いを持っていると感じました。

尾花さん:
また、肉料理のスペシャリストである米澤シェフが「おいしい」と感じるヴィーガン食であれば、肉料理が好きなお客様にも自信を持ってオススメできる新メニューが生まれるという期待もありました。

米澤シェフには2種類のミールキットを監修いただきましたが、ひとつは『ベジタブルボロネーゼ』です。マッシュルームやセロリ、にんじんなどの香味野菜とトマトソースを合わせて時間をかけて煮込んだ、米澤シェフ特製のボロネーゼソースは、肉を使っていないとは思えないコクと濃厚な味わいです。

尾花さん:
米澤シェフとのコラボは好評で、Purple Carrotを利用いただいたことのないお客様と出会うこともできました。また、私たち自身も、野菜の調理方法や食材の合わせ方などはもちろん、ヴィーガンに対する考え方など、米澤シェフから学ぶことが多くありました。

やはり、日本では、まだヴィーガンの認知も理解も低い状態です。ヴィーガンを広めていくために、米澤シェフのような、私たちと近い価値観を持っている方々と一緒に、学びあいながら、協力しあいながら、進めていけたらと考えています。

Oisixの売り場の外へ、初進出

ーー 2019年10月末の販売開始以降、2020年8月時点で累計販売食数が25万食を超えるなど、Purple Carrotは着実に支持を広げていると思います。今後の展望を聴かせてもらえますか?

尾花さん:
この1年間で、多くのOisixのお客様にPurple Carrotや「時々ヴィーガン」というコンセプトを受け入れていただいたように思います。今後は、Oisixの売り場だけでなく、Oisix以外の場所でも、Purple Carrotを通じてヴィーガン食の価値を届けていきたいと考えています。

例えば、今年10月より、スーパーマーケット『LIFE(ライフ)』の一部店舗で、Purple Carrotのミールキットの販売を開始しました。実店舗での販売は、これがはじめてです。

『BIO-RAL(ビオラル)』という売り場のコーナーに並べていただくのですが、こちらの売り場のコンセプトが「オーガニック、ローカル、ヘルシー、サステナブル」です。こういったキーワードに関心の高いお客様に、Purple Carrotを知っていただき、ヴィーガン食を味わっていただきたいという思いから販売開始に至りました。

尾花さん:
このような企業との取り組みを加速するためにも、ヴィーガンのPRにも力を入れていきたいですね。

現在はリモートワークの普及で、自宅で過ごす時間が増え、食生活を見直したいというニーズが高まっています。そんな状況下で、ヴィーガン食は、ヘルシーなのに食後の満足感がある新しい食体験として、広く受け入れられるのではないかと感じています。

日本だとヴィーガンという言葉が自体が目新しく、環境保護や健康に対する意識の高い人向けという認識もあるようなので、そのイメージを変えていきたいですね。ヴィーガンを気軽に楽しめるものとして感じていただけるよう、様々な施策を考えていきたいです。

ヴィーガンを広めることで、持続可能な未来をつくる

ーー 最後に、尾花さんがPurple Carrotのプロジェクトメンバーとして感じるやりがいを教えてください

尾花さん:
私は大学時代は栄養士の勉強をするなど、食の分野で働きたいと昔から思ってきました。そのなかで、オイシックス・ラ・大地への入社を決めた理由は、ビジネスのアプローチで食の社会課題の解決に貢献し、持続可能な未来を目指すという理念に深く共感したからです。

食は私たちの日々の生活に欠かせないものですし、おいしいものは人を幸せにします。でも、生産において、環境に対して負荷をかける一面もあります。おいしい食を続けていくために、どうやって持続可能な状態を築いていくかを考えていかないといけません。

「時々ヴィーガン」というライフスタイルを広めることで、この問題にアプローチすることができる。そういった手応えを感じています。Purple Carrotのおかげで、ヴィーガンという言葉が日本に浸透した。そんな風に評価いただけるよう、Purple Carrotを育てていきたいです。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部

記事一覧を見る
Oisix ra daichi Recruitment

Oisix ra daichi
RECRUITMENT

オイシックス・ラ・大地では、仲間を募集しています。

採用サイトOpen in new tab

VIEW ALL