近年、一度その会社を辞めた社員を再度雇用する「出戻り採用」が注目されています。オイシックス・ラ・大地でも、出戻りを経験したメンバーが増えてきました。
転職して別の企業で働いた後に再入社するケースもあれば、家庭の事情などで退職せざるをえなかったメンバーが再入社するケースもあります。様々な出戻りの形がありますが、「再度、ここで働きたい」という意志のあるメンバーの出戻りを、オイシックス・ラ・大地は歓迎しています。
とはいえ、再入社する側からすると、元々働いていた会社に戻るにあたり、歓迎されるのか、あまりよく思われないのか、周囲の反応が気になるかと思います。今回は、出戻り経験者である、大西さん・山田さん・福嶋さんの3人に、出戻りの実態を聞いてみました。
戻りずらさを抱えながらも、再入社に至った理由
ーー まずは、それぞれの出戻りに至った経緯を聞かせてもらえたらと思います。はじめに、大西さんからお願いします。
大西さん:
僕は、学生時代にアルバイトとして『らでぃっしゅぼーや』の配送センターで働きはじめ、契約社員を経て正社員となり、25年間ほど働いた後に退職しました。らでぃっしゅぼーやでは、青果(野菜)のバイヤーをはじめ、様々な仕事を経験しました。
大西篤司さん。
らでぃっしゅぼーやで約25年間、物流、バイヤー、商品受注発注、契約農場の経営(!)など幅広く担当。転職先でも経験を活かし、農家さんとの作付計画や産地訪問、商品開発を行っていた。カムバック理由は医療従事者支援WeSupportの立ち上げで、受発注業務の構築で悩んでいたメンバーから声をかけられたことがきっかけ。現在はWeSupportリーダーとして、企業から支援物資の調達、支援物資の振り分け、在庫管理を担当。
大西さん:
オイシックス・ラ・大地を退職した理由は、家庭の事情でした。周囲のメンバーは働き続けられるように色々と取り計らってくれたのですが、こちらの都合に合わせてもらうのも申し訳ないと思い、退職の道を選びました。
退職後は、らでぃっしゅぼーや時代の経験を活かして、他社で農産品の商品企画のプロジェクトに1年ほど関わりました。そのプロジェクトが一区切りつき、改めて転職活動を開始した最中に、新型コロナウィルスの感染拡大が起こりました。採用を見送る企業が続出し、先行きが見えない状態に陥ってしまったんです。
そんな時に声をかけてくれたのが、らでぃっしゅぼーや時代の先輩で、散々お世話になった村田さんです。僕が一番尊敬している先輩と言っても過言ではありません。村田さんとはFacebookで繋がっていて、退職してからも、定期的に連絡を取り合っていました。
当時、オイシックス・ラ・大地では、新型コロナウイルスの感染拡大に際して、医療従事者の方々に食品を無償支援するプラットフォーム『WeSupport』を、緊急事態宣言が発動された直後の2020年4月下旬に立ち上げていました。ただ、急遽立ち上げたものなので、オペレーションが追いついていなく、業務委託でもいいので、手伝ってほしいと連絡がきたのです。
ーー 村田さんからの誘いに、大西さんはどう感じましたか?
大西さん:
率直に嬉しい気持ちはありました。らでぃっしゅぼーや時代に僕は受発注の管理をしていたこともあり、僕が適任だと村田さんは思ってくれたようで、他の元らでぃっしゅぼーやのメンバーも「これ以上の人選はない」と言ってくれていると聞きました。こういう時に、自分の名前があがることは嬉しいですよね。
でも、一方で、自分の都合で退職した身でもあるので、戻りずらいという思いもありました。人によるかもしれませんが、僕にとっては退職とは会社への裏切りのようなイメージがあって、どういう顔をしてメンバーに会えばいいのかわからないと思ったんですね。
ただ、少し考えた後に、誘いを受けることにしました。それは、村田さんには、どこかで恩返しをしたいという想いを退職後もずっと持っていたからです。
そうして、『WeSupport』の運営に業務委託として数ヶ月働いた後に、正社員としてオイシックス・ラ・大地に再入社することになりました。『We Support』に携わるうちに、もっと関わっていきたいと思うようになりましたし、統合を経て以前よりも面白い事業ができる環境になっていることに惹かれたからです。
長く働くなかで、仕事に対する価値観が変わった。
ーー 山田さんは、オイシックス・ラ・大地(当時はオイシックス)を退職後、2社を経験した後に、オイシックス・ラ・大地に再入社ですよね。
山田さん:
そうですね。僕は、もともと2社目として、2011年6月にエンジニアとして当時のオイシックス社に入社しました。まだ社員数も少なく、システム全般の運用・保守・ヘルプデスクなど、何でも屋のような感じで働いていましたね。その後は、サービスの開発に関わったり、開発の生産性を上げるための環境の整備にも関わりました。
山田昌平さん。
2011年の6月にオイシックス(当時)入社し、システム全般の運用・保守・ヘルプデスク→小中規模の開発や開発推進→EC事業戦略のデータ分析サポートと約5年間幅広く担当。その後、新しい場所で今までに経験したことがないことにチャレンジするために退職を決意。2020年6月に出戻り。
山田さん:
入社して数年経った頃から、エンジニア向けのカンファレンスへの協賛や勉強会のようなイベントの運営を担当するようになりました。そのなかで、社外の凄腕のエンジニアと接する機会が増え、自分の技術レベルをもっと磨いていきたいという気持ちが自然と強くなっていきました。
そして、今までに経験したことのないことを、新しい場所でチャレンジしたいと思い、オイシックス社を2016年に退職しました。その後は、オイシックス社よりも規模の小さいベンチャーで働いた後に、様々な先進的な取り組みをしている企業で働きました。
ただ、エンジニアとして長く働くなかで、仕事に対する考え方が変化していきました。以前は、エンジニアとして成長できる環境を求めて職場を選んでいましたが、自分の仕事を通じて社会に広く貢献していきたいと次第に感じるようになりました。自分に子供ができたことで、価値観が大きく変わったのかなと思います。子供のために少しでも世の中を良くしていきたいと考えるようになりました。
そんなことを考えていて、ちょうど前職のプロジェクトが一区切りついたタイミングで、僕がオイシックス社に入社した時からお世話になっている岩井さんから、「戻って、一緒に働かないか?」と声をかけてもらったことが、再入社につながりました。
ーー 大西さん同様に、山田さんも社内のメンバーからの声がけが再入社のきっかけだったんですね。
山田さん:
実は、オイシックス社を退職した後も、エンジニア同士の繋がりは続いていて、誰が今どんなことをやっているのかなどを共有するオンライングループがありました。そういう繋がりがあったので、岩井さんも声をかけやすかったのかもしれません。
既に発表されていることですが、今の3倍の出荷量に対応できる新しい物流センターが、2021年中に海老名に新設される予定です。その新センターで稼働するシステムの開発の責任者となった岩井さんは、AWSでのインフラ構築経験や、Javaでの開発経験が豊富なエンジニアを探していて、僕が適任だと思ってくれたようです。
山田さん:
岩井さんにとっても、会社にとっても、重要なプロジェクトで僕を指名してくれたことは、素直に嬉しかったですね。今までお世話になっている岩井さんを担ぎ上げるしかないと感じました(笑)。同時に、オイシックス・ラ・大地が社会に役立つビジネスをしていることは以前から知っていましたので、今の僕の価値観とフィットする働き方ができるとも思いました。
現在は、新センターの稼働に向けて、開発環境や本番環境の設計・構築などに携わっています。稼働が開始した後も、運用フェーズとして様々なことが必要になると思われるので、これまでの経験を活かして、しっかりと対応していきたいです。
退職後も「業務委託で働かないか」という提案に驚き
ーー 福嶋さんは、退職後も業務委託として関わり続けた後に、改めて正社員として再入社したと聞いています。
福嶋さん:
はい。私の場合、転職して別の会社で働いていたわけではありません。最初に私がオイシックス社に入社したのは2009年で、当時は社員数もまだ少なく、デザイナーとして働いていましたが、デザイン以外も何でもやっていましたね(笑)
福嶋智美さん。
制作会社でデザイナーとして勤務し、2008年オイシックス(当時)入社。当時あったシニア向け事業でカタログ制作を担当後、家族の海外赴任で台湾に移住。12年にカムバック。その後はEC事業部の紙媒体全般に携わる。16年のCIリニューアルプロジェクトなどを経て、PBパッケージデザインなどに関わる。4月より育休から復職予定
福嶋さん:
一方、夫が転勤で台湾に行くことになり、最初は夫婦別々に暮らしていましたが、いつ日本に戻ってくるかの見通しも立たないので、私も台湾に移ることに決めました。仕事を続けたい気持ちはありましたが、そんな事情で退職せざるを得なくなったんです。
そのことを会社に告げると、「だったら、業務委託で働かない?」と提案を受けました。私としては、退職以外の選択肢はないだろうと思っていたので、正直、驚きました。当時は、今ほどリモートワークが一般的になっていない状況でしたので、台湾にいながら、オイシックスの仕事を続けるという発想は全くありませんでした。
ただ、嬉しさを感じる反面、申し訳ない気持ちがあったことも事実です。離れた場所にいる私と仕事を進めるのは手間がかかることですし、私の都合で退職を選んだにも関わらず、そんな特別扱いを受けてしまっていいものかと思いました。
そんな懸念を伝えると、「いつかは台湾から戻ってくるわけだし、その時に会社に戻ってきてくれたら嬉しいので、あまり深く考えないように」と言われました。会社や事業のことをよく知っている人を採用した方が、ゼロから採用するよりも会社として効率がいいから、そこは合理的に割り切って考えてみてと。
ーー 確かに、福嶋さん自身も会社を辞めたいわけではないから、形を変えてでも、関わり続けてほしいという会社の判断も納得できるものですよね。
福嶋さん:
そうですね。おかげで、台湾に移った後もオイシックスの仕事を続け、日本に帰国した2012年からは正社員として再入社しました。それからは、デザイナーとして、様々なプロジェクトに関わらせてもらっています。
今は、子供が生まれて産休をいただいていますが、オイシックス・ラ・大地は育休取得や育休からの復職率も高く、柔軟な働き方の対応をしてもらえることは本当に助かっています。「働きたい」という人の意志をすごく尊重している会社だと感じますね。
選択肢として、再入社を前向きに検討してもらえたら
ーー それぞれの話を聞かせていただき、ありがとうございました。大西さんと福嶋さんの話では、再入社に対して気まずさがあったり、退職後も業務委託として関わることに申し訳なさがあったという話でしたが、山田さんもそういう感情はあったりしましたか?
山田さん:
僕も、気まずさは感じていましたね。大西さんも言っていましたが、自分の都合で退職した身でもあるので、決まりが悪いとは感じていました。
ーー そういった感情は、どうやって乗り越えていったんですか?
大西さん:
働きだしてからは自然と気まずさは消えていきましたね。メンバーが暖かく迎えてくれたことが大きいと思います。振り返ってみると、自分のほうが変に意識しすぎていたのではないかと思います。
山田さん:
それはありますね。僕も働いているうちに、そういう感情は薄れていきました。僕の場合は、退職したのが2016年と経営統合前でもあるので、以前に在籍していたことを知らない人も多いです。自分が出戻り入社であることを、あまり意識しなくなりました。
福嶋さん:
私は、業務委託として働いている時は、申し訳ない気持ちが拭えなかったですね。周りがどんなに「大丈夫だよ」と言ってくれても、そう思ってしまいました。今、振り返ると、変に意識しすぎていたのかなと思いますけど。
ーー 最後に、オイシックス・ラ・大地へ再入社を考えている人へ、伝えたいメッセージはありますか?
福嶋さん:
私が言うのもなんですが、もし再入社することに気まずさを感じるとしたら、気軽に応募や相談をしてほしいです。私たちも含めて、再入社したメンバーは増えてきているので、再入社であることを特別に感じなくてもいいのかなと思います。キャリアの選択肢として、オイシックス・ラ・大地への再入社を前向きに考えてもらえたら嬉しいですね。
山田さん:
そうですね。現在のオイシックス・ラ・大地には、いろんなプロジェクトが新しく進んでいるので、興味があるものがあれば、気軽に中のメンバーに声をかけてもらえるといいかと思います。
大西さん:
統合する前と比べると、今は会社としてやれることの幅が一気に広がったように感じます。一度退職した人も、再入社したら、新鮮味をもって働けるのではないでしょうか。再入社を考えている人は、変に意識せずに、前向きに検討してもらえたらと思います。
執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部