オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

メタップスワン取締役の佐野さんが、オイシックス・ラ・大地で兼業を始めた理由

メタップスワン取締役の佐野さんが、オイシックス・ラ・大地で兼業を始めた理由

「これからの食卓、これからの畑」を理念に掲げ、食にまつわる様々な社会課題の解決を目指すオイシックス・ラ・大地。

今回は、デジタルマーケティング支援を行う株式会社メタップスワンの取締役を務めながら、オイシックス・ラ・大地にSpecial Advisor 兼 ソリューション事業本部・副本部長として、2021年から兼業で加わった佐野 達也さんを紹介します。

ライブドアグループでのインターネット広告営業、グリー株式会社での新規事業立ち上げ、メタップスグループでのDX支援事業など、様々な企業でインターネットビジネスに携わってきた佐野さん。そんな佐野さんが、市場成長性も高く、事業としての社会的意義も高い領域と感じているのが、”食”の市場です。

世界規模で巨大な市場でありながらも、デジタル化推進の余地が多く残されている食の領域は、インターネットビジネスに携わるものとして挑戦のしがいがあると、佐野さんは言います。今回、佐野さんのこれまでのキャリアや、オイシックス・ラ・大地で働くことを選んだ背景について、詳しく話を聞いてみました。

佐野 達也さん。

大学卒業後、バリュークリックジャパン株式会社(現:SMN株式会社)を経て、インターネット広告代理店を創業し、米国SEO会社日本法人に事業譲渡。その後、グリー株式会社にてリフォームEC事業の立ち上げ等を経て、2017年に2度の目の起業となるエンジン株式会社を創業。同年2017年に、M&Aによりメタップスグループ入りし、株式会社メタップスインタラクティブ代表取締役に就任。2019年1月子会社の統合により誕生した株式会社メタップスワンの取締役に就任。2021年2月より、メタップスワンと兼業で、オイシックス・ラ・大地にSpecial Advisor 兼 ソリューション本部 副本部長として入社。

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インターネットビジネスにのめり込んだ20代

ーー はじめに、佐野さんのこれまでについて聞かせてもらいたいのですが、かなりユニークなキャリアですよね?

佐野さん:
よく言われます(笑)。大学時代は、どこにでもいる普通の大学生で、自分の将来についてあまり深く考えたことはありませんでした。就職活動を迎えて、どこかに就職しないといけないと思いつつも、スーツにネクタイで満員電車に揺られながら毎日働くのも何か違うと漠然と感じていました。

そんな時、あるネット関連の会社の求人広告を見て驚きました。「当社は金髪に半パンでスケボーに乗って出社する社員もいます」と書かれていたからです。

他の業界と比べ、ネット関連の企業は、どこも自由な雰囲気を醸し出していました。「こういう業界で働きたい」とミーハー心に思ったのが、インターネットビジネスに関わるきっかけとなりました。また、実力主義を謳っている会社がネット業界にはとても多く、年齢に関係なく、若いうちから裁量ある仕事を任せてもらえそうな環境にも魅力を感じました。

新卒で入社した会社は、インターネット広告配信会社です。当時は、ネットバブルが崩壊した後で、インターネット自体は世の中に普及しはじめていましたが、インターネット広告については懐疑的な企業も多かったと思います。ただ、多くの企業がネット広告の可能性に関心を示していた時期でもあり、テレアポで大きな会社への訪問の約束が簡単にとれて、色々な提案をさせてもらえる時代でした。

佐野さん:
最初の会社は、入社後1年経たずに、当時プロ野球への参入などで世間を賑わせていたライブドアに買収されました。次から次に新しいことを仕掛け、勢いに乗るライブドアグループで数年過ごせたことは、とてもよい経験となりました。ネット広告も右肩上がりに市場でのシェアを拡大し続け、大きな成長産業の中で働いている感覚がありました。

最初の会社で数年働いた後は、スタートアップ企業に加わり、その後はインターネット広告代理店を自ら起業しました。この時は、広告営業だけでなく、比較サイトをたくさん作って、アフィリエイト広告で収益を上げたりと、思いつくことは何でもやっていました。ただ、会社経営を数年続けるなかで、勢いとノリに任せて今のまま続けても、小さくまとまってしまいそうな感覚がどこかにありました。

そんな時、僕のやっていた事業に興味を持ってくれた会社が現れたため、社員とも相談の上、事業譲渡する道を選びました。がむしゃらに突っ走った20代は、良いことばかりではありませんでしたが、若いうちに様々な経験を積めたのは、本当に良かったと思っています。

30代を迎えるにあたり、「ビジネスを改めて学び直したい」「経験の幅を広げたい」と思い、ソーシャルゲームで勢いに乗っていたグリー株式会社で働く選択をしました。

グリーには官民国籍問わず各方面から優秀な人たちが多く集っていて、勉強になりましたし、自分の強みを見直す機会にもなりました。特に、ゼロからの新規事業の立ち上げに関わらせてもらったことは、自分にとって大きなターニングポイントになったように思います。

EC化率が低い業界でデジタル化を促進する価値

ーー 新規事業開発の経験が、佐野さんにとって大きなターニングポイントになった意味を、詳しく教えてください。

佐野さん:
数ある事業案の中で、僕たちが最終的に選んだのは住宅リフォームのEC化事業でした。

当時、リフォーム市場は国内だけで数兆円の規模があり、今後の人口減や空き家問題を抱える国としても、新築ではなく中古住宅の流通を促すことを戦略として掲げていて、これからの拡大が見込まれる市場でした。ただ、EC化率はものすごく低く、インターネットで検索しても、商品や工事費の適正価格の把握が困難で、工事をする会社や人についての情報も少なく、多くの人が不便や不安を感じていました。

僕らは、そういった情報の非対称の解消を通じて、消費者には適正価格での安心安全なリフォームを、工務店さんにはインターネットを通じた新規受注の支援を行うため、事業を立ち上げました。

ただ、事業の立ち上げには、様々なハードルがありました。業界独特の慣習があったりして、新参者の僕たちがすんなり受け入れてもらえない場面が多々ありました。そもそもインターネットが浸透していない業界なので、サービスを理解してもらえないことも少なくありません。

そのため、全国各地のリフォーム事業者の方々を訪問し、自分たちのサービスや目指していることを説明させてもらうことを繰り返していました。当時の私は、瞬間的にネット業界で最も工務店さんに会っていたひとりだと自負しています(笑)。

佐野さん:
インターネットビジネスの新規事業開発というと、スマートな響きがあるかもしれませんが、実際は、粘り強く、誠実に、様々なパートナーと向き合うことが大切です。

立ち上げから一年ほど経った頃には、多くのリフォーム事業者の方々が、僕らのサービスに加盟してくれました。同時に、僕らのサービスを通じてリフォームを行うユーザーさんも増えていき、とてもやりがいを感じていました。

オイシックス・ラ・大地社長の高島さんが書いた本『ライフ・イズ・ベジタブル』を読むと、「野菜をインターネットで販売したい」と農家さんに伝えても、なかなか理解が得られなかったとか、オイシックスをはじめた頃の苦労話が載っていますよね。

そういう話を読むと、リフォームEC事業を立ち上げた時の苦労を思い出します。EC化率が低い業界で、デジタル化を推進するのは、とても大変なことですが、やりがいも大きいと思います。

リフォームEC事業の経験から、EC化率の低い業界に向けたデジタル化支援の需要を改めて認識しました。当時は、今みたいにDXという言葉が、そこまで流行ってませんでしたが、ある意味、DX支援事業と言えるのかもしれません。また、デジタル人材が業界内外で圧倒的に不足してところにも目をつけていました。

その後、その2つのテーマを軸に再び挑戦しようと、グリーを退職し、2度目の起業に踏み切りました。立ち上げて半年ほど経過した時に、古くからの知人でもあったメタップスグループの高木さん(現メタップス常務執行役員、メタップスワン代表取締役)から声をかけていただき、今後の事業展開や将来の構想などを話していくうちに、一緒にやったら面白いことができそうだと意気投合し、グループ入りすることを決断し、今に至ります。

EC化が難しくも、大きな可能性の眠る食の領域

ーー そんな佐野さんが、オイシックス・ラ・大地で働くことを選ばれた理由とは何なのでしょうか?

佐野さん:
オイシックス・ラ・大地で働こうと決めた理由は、大きく3つあります。1つ目は、兼業を認めてくれたことです。

オイシックス・ラ・大地は、役員の星さんや西井さんなど、複数の兼業者がいて、そのことを宣伝もしていますよね。「入社にあたって、兼業を認めてほしい」と相談をすると、快諾していただけました。もちろん、上場会社2社を跨ぐ活動になるので、両社ともにちゃんとルールを定めた上で取り組んでいます。

2つ目は、人が魅力的だったからです。オイシックス・ラ・大地は、食の領域というEC化率が低い業界で、難易度の高い生鮮食品のインターネット販売に成功し、食のEC市場を牽引しています。20年以上、この難易度の高い領域に挑戦し続け、ここまで拡大してきたことが純粋に凄いと思っており、その取り組む姿勢にも大きく惹かれました。

つい先日、売上高1,000億円突破の決算発表をしたばかりですが、社長の高島さんは「自分たちの挑戦はまだまだこれから」とよく言ってます。

数年前に創業メンバーである高島さんと堤さんと食事をした際に、立ち上げ当初の話を聞いたのですが、僕の想像を超える修羅場をくぐり抜けてきたはずなのに、「あの時大変だったよねー」と明るく楽しそうに話していたのが印象的でした。どこかのインタビューで高島さんが「山頂への到着を目指していたはずが、登ること自体が楽しくなってしまった」と語っていましたが、本当にそうなんだろうなと思います。

オイシックス・ラ・大地の会社の理念は「食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決する」ですが、どの事業も、この理念に基づいて活動していると感じています。

入社前から経営陣の方々以外にも、オイシックス・ラ・大地の社員の何人かと交流がありましたが、誰と話しても、食や農業の未来を本気で考えていることがわかりました。そういう関係を重ねるなかで、この人たちのサービスをもっと応援したい気持ちが高まりましたし、自分もその輪に加わりたいと思いました。食のあり方や、農業などの生産のあり方を、より良い方向へと変えていくのは、きっとこの会社だと思ったんです。

最後の、3つ目は食の領域に興味を持ったことです。

佐野さん:
食に興味を持ったきっかけは、まさにOisixを使い始めたことです。4年ほど前、「なるべく子供に体に良いものを食べさせたいけど、共働き家庭としては時短も追求したい」と考え、Oisixを使いはじめました。毎週届くミールキットは、簡単に作れるのにジャンル豊かでおいしくて、見た目も彩がいいし、更に有機野菜で添加物も少なく、その品質に衝撃を受けました。

忙しい日々の中でもOisixは食生活に豊かさを与えてくれて、子どもが喜んで食べてくれるものも多かったのです。一時期、長男がOisixの焼きおにぎりしか食べなくなった時期もありました(笑)。子供が成長するなかで、子供たちに良い未来を残せるような仕事をしていきたいという気持ちが自然と高まっていきました。

また、ビジネス的な観点でいうと、経済産業省が2020年に公開したデータによると、BtoCにおける食品・飲料酒類業界の市場規模は約1兆8千億円ですが、この分野のEC化率はたったの2.89%。日本の全産業のEC化率である6.76%と比べると、食品業界はEC化が進んでいない業界と言えます。これは海外でも同様です。

今、世界的では、植物性代替肉のような新食材からスマートキッチンや食のパーソナライゼーションなど、食の領域での新しい動きが活発化しています。日本も例外ではなく、今後それらが拡大していく中で、様々なオポチュニティがあると思っていますし、それらの機会にいち早く取り組んでいけるのは、間違いなくオイシックス・ラ・大地ではないかと思っています。

培ってきたインターネットビジネスの経験を活かしたい

ーー 佐野さんの、オイシックス・ラ・大地での当面のミッションは何になるのでしょうか?

佐野さん:
現在は「ソリューション事業本部 副本部長」という肩書きで働いています。

ソリューション事業本部は、主に法人向けに、オイシックス・ラ・大地が食品宅配EC事業を展開していく中で培ってきたアセットやノウハウ・機能・データをソリューションとして提供し、様々な課題解決や事業成長、新規事業開発に貢献する活動を主としています。

例えば、この1年間で会員数が倍増した、株式会社三越伊勢丹ホールディングス様の定期宅配ECサイトISETAN DOORも、ソリューション事業部の運営支援先のひとつです。ECサイトのシステムから、物流や配送などの仕組みまで、オイシックスで培ってきたノウハウや機能を提供しています。

オイシックス・ラ・大地として培ってきたものを、他社も活用できる形に整えて、食の領域のEC化やデジタル活用を促進していく。更には、オイシックス・ラ・大地だけでは解決できない社会課題の解決を、パートナー企業と共に推進していく役割も担っていきたいと考えています。

佐野さん:
また、Special Advisorという役割もあります。これまでの知見を活かして、オイシックス・ラ・大地内の様々な新規事業開発や事業成長に貢献してほしいという期待を込めて、与えられた肩書きだと、僕の中では理解しています。

オイシックス・ラ・大地では、現在、様々な新規事業開発のプロジェクトが動いています。新規事業開発というと、ゼロからイチを生み出すように思われるかもしれませんが、ほとんどは、既存の何かと何かの掛け合わせです。

それであれば、掛け合わせる対象として、知っているものの幅を増やしていったほうがいいですよね。培ってきた知見を活かして、オイシックス・ラ・大地の今後の成長に積極的に貢献していきたいと考えています。

成長産業で働くことは、自分を高めることに繋がる

ーー 最後に、オイシックス・ラ・大地の採用に興味を持っていただいている人に向けて、佐野さんからメッセージをお願いできますか?

佐野さん:
食の物販市場は、リアルとECの全てを含めると、推定で約60兆円以上あると言われており、国内の物販系では最大規模になります。一方で、繰り返しになりますが、EC市場規模は約1.8兆円であることからEC化率は約3%に留まり、最もEC化が進んでいない領域と言えます。

食のEC化はポテンシャルが高く、今後拡大することが見込まれていますが、まだ始まったばかりです。

また、食は関係している業界が幅広く、食材開発・出荷・調理加工・パッケージング・販売と、それぞれの工程毎に大きな市場があります。それら広義の食にテクノロジーを掛け合わせたフードテック市場は、世界的に数百兆円規模あると言われています。

これらの機会に対して様々な挑戦をしていこうとしているオイシックス・ラ・大地には、各方面からユニークなキャリアの人たちが集まってきていて、非常に面白い状態にあります。また、会社の規模が大きくなり、登る山も大きくなり、会社としても様々な変革のタイミングを迎えています。

この場にいるだけで、自分のキャリアにおいて、大きなターニングポイントとなるような経験を積めるのではないかと思います。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部

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