オイシックス・ラ・大地の「挑戦」を深ぼる

子どものいる困窮家庭の食生活を支えたい。オイシックス・ラ・大地が運営する『WeSupprt Family』とは?

子どものいる困窮家庭の食生活を支えたい。オイシックス・ラ・大地が運営する『WeSupprt Family』とは?

厚生労働省が発表した『2019年国民生活基礎調査』によると、日本では子どもの約7人に1人が貧困状態にあるとされています。そして、昨今の新型コロナウイルスの影響により、仕事先の休廃業や労働時間の短縮で収入が減少し、経済的に困窮する家庭が増えているといわれています。

こうした社会問題の背景を受け、食に関する様々な社会課題をビジネスの手法で解決することを目指すオイシックス・ラ・大地では、​​2021年11月より新しいプロジェクトを開始しました。協賛企業から無償提供いただいた食品をとりまとめ、ひとり親世帯を中心とした困窮家庭に食支援を行う『WeSupport Family』です。

『WeSupport』は新型コロナウイルス患者の治療にあたる医療従事者の方々に食支援を行うため、ココネット株式会社と一般社団法人RCFと共同で2020年4月に設立。これまで、124カ所の病院を対象に、延べ支援人数は76万人、支援金額では9億4千万円相当の支援を実施。国内有数の食支援プラットフォームへと成長しました。

医療従事者向けに活動をしていた『WeSupport』が、困窮家庭に向けた食支援をはじめた理由とは何か。今回、コーポレートコミュニケーション部の大西篤司さんにプロジェクトが生まれた背景や活動の展望について話を聞いてみました。

企業として、何かできることはないか?

── はじめに、これまでのWeSupportの活動を振り返っていただけますか?

大西さん:
ぼくは、2020年4月の設立時からWeSupportに携わり、企業から支援物資の調達や、支援物資の各医療施設への振り分け、在庫管理などを担当してきました。正直、設立した当初は、こんなに支援の輪が広がるとは思いもよりませんでした。

オイシックス・ラ・大地では「非常時の時こそ、精一杯働いて社会に貢献すべき」という考えを大切にしています。WeSupportにおいても、新型コロナウイルスによる医療崩壊の危機というひっ迫した状況を目の当たりにし、「食を扱う企業として、何かできることはないか」という想いからはじまりました。

WeSupportの活動をするなかで、ぼくらが常に意識してきたことがあります。それは「善意のありがた迷惑」を起こさないことです。

大西篤司さん。
らでぃっしゅぼーやで約25年間、物流、バイヤー、商品受注発注、自社農場の経営など幅広く担当。転職先でも経験を活かし、農家さんとの作付計画や産地訪問、商品開発を行っていた。医療従事者支援WeSupport Medicalの立ち上げをきっかけに再入社。国内有数の食支援プラットフォームへと成長させた後、引き続きWeSupport Familyの企業から支援物資の調達、支援物資の振り分け、在庫管理をリーダーとして担当。

大西さん:
有事の際、被災地に集まった過剰な支援物資が、現場の混乱を招く「第二の災害」になると言われています。大量に届いた毛布など、使用できない救援物資を処分するために、被災した自治体が多額の費用を投じたケースもあると聞いています。

オイシックス・ラ・大地では、食品宅配の事業において、お客様の現状を丁寧にヒアリングし、ただ食材をお届けするだけでなく、お客様の食卓における課題を解決することを心がけています。その姿勢は、WeSupportにおいても変わりません。各病院の状況をヒアリングさせていただき、その上で最適なサポートのあり方を考えていきました。

病院ごとで置かれている状況は違い、求める食品の要件は変わってきます。WeSupportの事務局がプラットフォームとなり、サポート企業と医療現場のニーズをマッチングすることで、本当に必要とされている支援物資を届けることができます。

WeSupportはこの約2年間で、東京・神奈川・大阪を中心に合計124カ所の病院に食支援を行いました。医療従事者の方々から感謝の言葉をいただくことも多く、この活動をはじめてよかったと心から思います。

(▲)WeSupportの支援先の医療従事者の方々からいただいたメッセージ

深刻化する「ひとり親の困窮世帯」の問題

── 昨年から、ひとり親世帯を中心とした困窮家庭に食支援を行う『WeSupport Family』がはじまりました。その背景とは何なのでしょうか?

大西さん:
活動を開始した最大の理由は、ひとり親家庭の困窮が大きな社会課題となっていることです。

厚生労働省が発表した「2019年国民生活基礎調査」によると、全国で子どもがいる世帯の約5分の1が「困窮世帯」(年収の中央値228万円の半分の114万円以下の世帯)と言われています。そして、ひとり親家庭の約半数が困窮世帯に該当します。

大西さん:
コロナ禍による経済的な影響を受け、1回の食事量が減ったり、炭水化物だけの食事になったりしている世帯も増えていると聞きます。困窮世帯の食支援をする団体は既に今ありますが、その多くが数ヶ月に1回程の支援しか行えておらず、コロナ禍で企業からの物資提供が止まるなど、思うような支援ができていないことも知りました。

オイシックス・ラ・大地では、子育てをしている家庭を対象にしたサービスを展開していることもあり、ひとり親家庭の困窮の問題については以前からずっと議題になっていました。そうしたなかで、WeSupportのプラットフォームを活用することで、この社会問題の解決に貢献できるのではないかと考えました。

『WeSupport Family』では、サポート企業から無償提供いただいた食材物資をとりまとめ、ひとり親家庭の困窮世帯を中心に支援活動されている団体を通じて、各家庭に物資をお届けします。

大西さん:
また、医療従事者向けの食支援を行うなかで、多くの企業や個人がWeSupportに賛同してくださったことも、新しい取り組みを実施することに決めた大きな要因になっています。

支援いただいた企業の方に話を聞くと、「WeSupportがあってよかった」という声をよくいただきます。サポートしたい気持ちはあるものの、どういう方法がいいかと悩むなかで、WeSupportのおかげでスムーズに支援を行うことができたと評価いただいています。

結果的に、医療従事者向けの食支援では、127社の企業から食品物資の無償提供や寄付金による支援を受けました。また、ネット募金などを通じて、個人の方々からも多額の寄付が集まりました。WeSupportの活動を通じて、多くの方々が社会課題の解決に貢献したいという想いを持っていることを肌で感じました。

おそらく、ひとり親家庭の困窮という社会課題にしても、課題解決に貢献したいという想いを持っている企業や個人は少なくないと思います。WeSupportがしっかりとした仕組みを確立すれば、困窮世帯への支援の輪も広げることができるのではないか。そうした医療従事者向けの食支援における学びも、活動を始める後押しになりました。

食べることの「楽しさ」も届けていきたい

── 『WeSupport Family』の活動をするなかで、意識していることや課題と感じることは何ですか?

大西さん:
医療従事者向けの支援の際は、忙しい業務の合間に簡単に食べられるようなものや、疲れを癒すためのお菓子や飲み物を望まれることが多くありました。ですが、子どもの栄養を考えると、それだけでは足りません。

アメリカでは、困窮世帯の子どもが安く手軽に食べられるファストフードがメインの食事となり、肥満が問題となっています。日本でも、あるご家庭では、3袋入り焼きそばの1袋を3人で1食ずつ食べると聞きました。ソースも半分だけ使って、残りは他の日に調味料にするそうなんです。これではお子さんの成長への影響も心配です。

そのため、『WeSupport Family』では、食品をただ届けるだけでなく、届ける食品の栄養バランスにもこだわっていきたいと考えています。

また、子どもたちに「食べることは楽しい」と感じてもらえたら嬉しいと思っています。例えば、調味料は長期間保存できて、色々な種類の調味料があれば味付けも豊かになります。そうした食の楽しさを感じてもらえるような食品も届けていきたいです。

大西さん:
また、医療従事者向けの食支援をしていた時から得た気づきで、自分のモノサシで判断しないことも大切にしています。

ある時、サポート企業様から固形のカレールーを提供いただいたのですが、忙しく働いている医療従事者の方々は料理をする時間はないだろうと考え、先方がはじめに提示いただいた量の半分だけをお送りいただきました。

ところが、医療従事者からは「カレールーまで送っていただけたことが、すごく嬉しかった」「自宅でルーを使わせてもらいましたが、職場だけでなく家庭に帰ってからのサポートも感じました」といった声をいただき、ハッとしました。自分のモノサシだけで判断していると、支援の可能性を狭めてしまうと、私の意識が変わった経験でした。

都内の生活困窮者支援団体の担当者からも、同じようなお話を伺いました。「私たちにも何かできることがあれば」と、日用品や雑貨など食品以外のものを扱っている企業から物資が寄付され、担当者自身は「必要ないかも」と思っていたけれど、各家庭に届けたらとても喜ばれたというケースがあったそうです。

この話を聞いて、私たちのモノサシで、集める物資を判断してはいけないと改めて思いました。支援をまずはお届けして、受け取り側からフィードバックをいただきながら、必要な支援を探っていきたいと考えています。

支援の輪を広げ、多くの家庭を支えていきたい

── まだ活動開始して間もない『WeSupport Family』ですが、これからの目標や活動の展望について教えてください。

大西さん:
少しでも多くの家庭を支えたいという想いで取り組んでいるので、支援先家庭の数を増やしていくことをチーム内では第一の目標に掲げています。当然、そのためには支援物資を増やすことが欠かせないため、並行してパートナー企業を募っていきます。

また、ひとり親家庭の困窮という社会課題は、メディアで報道されることはあるものの、その実態があまり知られていないように感じています。港区や品川区といった都心にも、困窮世帯と呼ばれる家庭が存在していることを、この活動をはじめるまで知りませんでした。

こうした社会課題の実態を社会に伝えていくことも『WeSupport Family』の重要な役割だと考えています。例えば、サポートを検討いただいている企業に向けた説明会では、支援団体の方々をゲストに招き、課題の実態などを具体的に伝えていただく時間を設けるようにしています。

ぼくら自身もまだ勉強不足なことばかりですが、『WeSupport Family』の活動を通じて、少しでも多くの企業がひとり親家庭の問題について関心をもち、課題解決に向けて行動するきっかけをつくれたらいいと考えています。

── 最後に、大西さんが感じる『WeSupport』のやりがいを教えてください。

大西さん:
医療従事者向けの食支援は、新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態におけるプロジェクトとしてはじまりました。一方、困窮世帯の課題は、感染拡大が収まればプロジェクトの終わりが見えるといったものではありません。家庭の暮らしを長期的に支えていく『WeSupport Family』は、はじめたら止めることのできない支援です。

オイシックス・ラ・大地は「食」を扱う会社ですが、ただ食品を販売して届けるだけでなく、食を通じて様々な社会課題を解決していこうとしている会社であることを、WeSupportを通じて改めて実感しました。

ぼく自身、仕事を通じて社会に貢献していきたいという気持ちが強いので、WeSupportの活動にとてもやりがいを感じています。また、オイシックス・ラ・大地社内のメンバーから、「こういう活動こそ、オイシックス・ラ・大地がやるべき」といった応援の声をもらうことが多く、大きな励みになっています。

生きるうえで欠かせない「食」を扱う会社として、多くのご家庭の毎日の食を支えられるよう、『WeSupport Family』の支援の輪を大きくしていきたいです。

執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部

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