2000年のサービス立ち上げ以来、成長が続く食品宅配サービス『Oisix』。現在、サービスの更なる進化を目指し、データ活用やビジネス変化に強いシステム基盤を整えるべく、大規模なシステム刷新プロジェクト(モダナイゼーション)に取り組んでいます。
これまでの歴史の中で築かれたシステムを、クラウドネイティブかつモダンなシステムへと置き換えるだけでなく、サービスとしてあるべき姿を見据え、今後必要となる機能も同時につくる必要があります。
今回紹介するのは、このモダナイゼーションのプロジェクトマネージャーをつとめる菊池司さんです。どのようなことを意識しながら取り組んでいるのか。また、Oisixのプロジェクトマネージャーとして働く魅力とは何か。菊池さんに話を聞いてみました。
事業貢献できるエンジニアでありたい
── はじめに、菊池さんご自身について聞かせてください。オイシックス・ラ・大地に入社する以前は、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
菊池さん:
プログラマー派遣を行う会社に新卒で入社し、プログラマーとしてキャリアをスタートさせました。当時は自分でコードを書いていましたね。開発経験を積むうちに、プロジェクトマネージャーへとポジションが変わり、様々な受託案件の対応を行うようになりました。
その後、自社でSaaSのサービス事業が立ち上がり、その開発チームのリーダーを任されました。チーム人数は一番多い時で20名程度いました。プリセールス、メンバーの採用、委託先の選定、知財管理など、幅広い経験をさせてもらいました。
一方、自社サービスとして事業拡大を目指す中で、開発側とビジネス側で議論が噛み合わないことが往々にしてありました。そうした経験から、技術者視点と経営者視点の両方を俯瞰しながら物事を考える必要があることを悟り、社会人向けの大学院に通うことを決めました。入学先は東京理科大学の技術経営専攻(MOT)というコースです。
大学院では、テクノロジーを活かしながら、どうやって事業を起こし発展させていくかを体系的に学びました。以前から「事業貢献ができるエンジニアでありたい」と考えていましたが、技術経営について深く学ぶことで、そのマインドがより強くなったように感じます。
── そこから、どのような経緯でオイシックス・ラ・大地へ入社することになったのでしょうか?
菊池さん:
転職の理由は幾つかあるのですが、ひとつは大学院に通う中で様々な業界の人たちと出会ったことです。外の世界を知ることで、「これまでとは違う環境に身を投じて、自分の視野を広げたい」という気持ちが芽生えていきました。
転職活動では幾つかの会社を受けましたが、共通していたのは食に関する事業をしていることです。たまたま第一子が生まれたタイミングで、自分たちの暮らしに身近な分野で働いてみたいと考えていました。
オイシックス・ラ・大地の選考を受けたのは、前職の同僚が働いていて、誘ってくれたことです。話を聞いてみると、経営統合したばかりということもあり、取り組むべき課題が多いことがわかりました。また、意思決定のスピードが早く、十分な仮説検証ができていたら、すぐに実行に移していく文化のある会社であることを感じました。
ベンチャーで長く働いていたこともあり、未整備の環境で様々な課題を解決していく働き方のほうが私にはあっています。大規模な組織でありながら課題が多く、挑戦のしがいがありそうだと感じ、オイシックス・ラ・大地への入社を決めました。
事業全体を俯瞰しながら物事を考えていく
── 入社後、菊池さんはOisixのシステム開発におけるプロジェクトマネージャーとして働いてきました。具体的な仕事内容について教えてください。
菊池さん:
私たちの部門では、エンジニアリングを通じてOisixのビジネス効果を最大化することをミッションに、様々なプロジェクトに取り組んでいます。
例えば、23年10月よりOisixではdアカウントと連携し、Oisixでのお買い物によってdポイントを貯められるようになりましたが、その裏側のシステム開発を私たちのチームで推進しました。このような比較的規模の大きなプロジェクトもあれば、サービスの改訂に伴う細かいシステム変更などにも随時対応していきます。
プロジェクトの種類も様々です。お世話になった人へOisixの食材を贈る『Oisix eGift』などの新サービスの開発。アマゾンウェブサービス(AWS)へのシステム基盤移行などのインフラ関連の開発。reCaptchaや3Dセキュア2.0対応のようなセキュリティ強化に関する開発など、幅広く対応していきます。
── プロジェクトの立ち上げに関しては、どういう流れが多いですか?
菊池さん:
プロジェクトの立ち上げに関しては、Oisixを運営しているEC事業部のメンバーの起案によってはじまるケースが一番多いです。「こういう効果を期待し、こうした新機能を実装したい」といった仮説が持ち込まれ、最適な形で実現するにはどうすべきかを一緒に議論し、社内のエンジニアチームや協力会社と連携しながら開発を進めていきます。
また、プロジェクト内の役回りについてもケースバイケースで、事業部側と並走するケースもあれば、開発寄りの立ち位置で成果物の品質に軸足を置く場合があります。新サービス開発などの際は、こちらからもサービス要件やシステム概要について意見を伝え、より良いサービスになるように動いていきます。
── Oisixのプロジェクトマネージャーならではの特徴として、菊池さんが特に感じることはありますか?
菊池さん:
プロジェクトを進める際に、留意すべきことの幅広さが特徴的だと感じます。例えば、Oisixでは商品の仕入れや発送などの物流も自社で行なっているため、些細なシステム変更が様々な業務プロセスに影響を与える可能性があります。その影響範囲の見極めが重要で、事業全体を俯瞰しながら物事を考えていかないといけません。
私自身、この会社に入るまではECや物流についての知識は全くありませんでしたので、ほぼゼロから勉強していきました。現在でも案件によっては知らないことに遭遇するので、その度に調べたり、社内のメンバーに話を聞かせてもらったりしながら、自分の知見を広げていっています。
運用と並行して、刷新を遂行する難しさ
── 現在、 菊池さんはOisixのモダナイゼーションに取り組んでいます。このプロジェクトの概要を教えてもらえますか?
菊池さん:
Oisixは2000年に開始したサービスですが、裏側のシステムは刷新することなく、コードやファイルが継ぎ足されながら開発が進められてきました。この約20年間で、数々の新しいページや機能が追加されてきたわけですが、その過程で裏側が徐々に複雑化していました。
現在、Oisixは会員数が40万人を超えるサービスへと成長しましたが、この状態のままでは成長の足枷になってしまう可能性があります。実際、ビジネス上の判断から実行までのサイクルが間延びしているケースがあります。そうした状態を改善し、拡張性にも保守性にも優れた状態を目指すことがプロジェクトのゴールです。
経営陣もモダナイゼーションの緊急度や重要度の高さを認識していて、これからの数年間で抜本的に刷新を進めていくことが決まりました。体制も社内横断的なものになり、アーキテクトが全体設計を描き、バックエンド側とフロントエンド側のエンジニアチームが密に連携をとりながら進めていきます。
── モダナイゼーションを推進するにあたり、特に難しさを感じるのはどんな部分ですか?
菊池さん:
Oisixはお客さまの毎日の食を支えるものですので、サービスを止めることはできません。既存のシステムを運用しながら、その隣で新しいシステムをつくり、移行を進めていく必要があります。そのため、技術的なハードルだけでなく、業務的な部分やビジネスへの影響など様々なことを考え抜かないといけません。
モダナイゼーションの初期段階として、Oisixのシステム基盤をAWSへ移行するプロジェクトを約2年間ほどかけて実施したのですが、その際も入念な調査と準備を行いました。移行作業の試験をするだけでもシステムに負荷がかかるので、様々な部門のメンバーと連携をとりながら、慎重に進めていきました。
── モダナイゼーションの完了まで、どれくらいの期間がかかると見込まれていますか?
菊池さん:
あと3年くらいで、Oisixのシステムで利用する主要ソフトウェアがEOLを迎えるため、その時期までには様々なことを判断する必要があります。事業の成長を考えても、それくらいのスパンである程度の形にまで辿りつかないといけないと感じています。
ただ、他社さんのモダナイゼーションの事例などを見ると、2〜3年で完遂したことが好事例として紹介されていたりするので、簡単なことではないと思います。経営陣を含めて、様々な部門と連携をしながら、推進していきたいです。
どんな課題にでも答えはあると信じて
── 現在、このモダナイゼーションを共に推進していくプロジェクトマネージャーの採用も強化しています。どういう人がOisixのプロジェクトマネージャーに向いていると思われますか?
菊池さん:
Oisixにおいて、プロジェクトマネージャーの定義は「プロジェクトをなんとかして完遂させる人」になります。そして、完遂という言葉には、システムをリリースして終了ではなく、期待されたビジネス効果を発揮するところまで含まれています。
オイシックス・ラ・大地の行動規範のひとつに「ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ」という言葉があります。これは、ベストを尽くす努力は大切ではあるが、ミッションの達成を常に見据え、ゴールから逆算して行動することこそ一番重要という意味です。
システム開発においても、開発のための開発にならないように、「何を実現したくて、自分たちはプロジェクトに取り組んでいるのか」をよく話し合うようにしています。そして、そこから逆算して「あるべき姿」を導き出し、そこに上手く着地できるように開発を進めていきますし、リリース後も必要があれば修正や変更を加えていきます。
同時に、ビジネス効果を発揮しようと思うと、どの部署でどのような業務が行われているのかや、現場の課題が何かを自ら把握していく必要があります。そうした知見を増やすことで、各部署へ提案できる内容も変わっていきます。
そのため、「エンジニアリングを通じて、事業成長に貢献したい」「事業側にも片足を入れながら、プロジェクトマネジメントのスキルを高めていきたい」と思う人は、Oisixのプロジェクトマネージャーに向いていると思います。
── オイシックス・ラ・大地のミッション自体が「食に関する社会課題をビジネスで解決する」ですので、ビジネスマインドがある人が求められると言うことですね。
菊池さん:
そうですね。とはいえ、誰も経験したことのないようなプロジェクトが多いので、大変なことが多いのも事実です。一筋縄にはいかないことばかりで、私自身、何度も頭を抱えることがあります。
ただ、「どんな課題にでも答えはある」と思っていて、それを前提に動くことが大事だと感じています。わからないと思うことでも、一つひとつ掘り下げていけば、何かしらの答えは見つかるはずです。そう信じて、粘り強く対応していくマインドが大切だと思います。
また、こうした大規模なサービスのモダナイゼーションに携われるのは、自分のキャリアにおいて貴重だと思いますし、今このタイミングでしか関われないものです。難易度が高い分、ビジネスに与える影響も大きいですし、挑戦のしがいがあると感じています。
難しい課題を解くことで、自分の力を伸ばしていきたい。そんな意欲をもっている方と、一緒に働けたら嬉しいです。
執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部
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