「これからの食卓、これからの畑」を理念に、食にまつわる様々な社会課題の解決を目指すオイシックス・ラ・大地。今回はORD海老名ステーションの現場管理者の仕事について紹介します。
ORD海老名ステーションとは、2012年に設立された食品宅配サービス『Oisix』専用の物流拠点です。3階建てで、冷蔵・冷凍・常温の3温度帯対応の倉庫があり、総床面積は約2,000坪。日本全国から集まる食材を管理し、Oisixを利用する15万人以上のお客さまからの注文に応じて、ここから全国に商品を発送しています。
センターでは、機械による自動化は進めつつも、こだわりの商品は一つ一つ自分たちの目で確認をし、専用の段ボールに痛まないように詰められ、お客様の元へ商品を送り出します。多くのパートタイマーや派遣社員のスタッフさんによって、物流ラインは支えられています。
そして、作業を担うスタッフの教育や、物流ラインの進捗管理、発生する課題の改善などを担当するのが現場管理者の面々です。
会員数が増え、入荷量・出荷量が伸び続けるなかで、センターのモノやヒトをどう管理し、物流ラインをスムーズに安定稼働させていくか? ORD海老名ステーションで現場管理者を務める大矢さんに話を聞いてきました。
(写真左※2019年撮影)大矢優騎さん。
高校時代にオイシックスの物流センターでアルバイトをはじめ、正社員として働く現在に至るまで、Oオイシックス・ラ・大地の物流最前線で10年以上活躍中。大学時の就職活動では別会社から内定をもらっていたが、20代のうちから様々な経験を積める環境を求めて、オイシックス・ラ・大地への入社を選択。
現場管理者は物流ラインの全体最適を担う役割
ーー 全国のOisixのお客さまに商品を出荷しているORD海老名ステーションですが、どんな作業が行われているのでしょうか?
大矢さん:
まずは、全国の契約している生産者さんから届く食品の入荷です。届いた食品に対し、検品などの品質管理をし、冷蔵・冷凍・常温ごとに倉庫へ格納します。
Oisixでは青果を取り扱っているので、痛みがないかといった検品がとても大切になってきますし、温度帯ごとに商品の格納方法が変わります。また、在庫管理においては、賞味期限を気にしながら、対応しないといけません。食ならではの物流の難しさがあります。
そして、お客様からいただく注文データをもとに、各商品をピッキングし、段ボールに詰めていきます。そして、各地域ごとに出荷する段ボールを仕分けし、配送パートナーであるヤマト運輸さんへ出荷します。この他にも細かい作業がありますが、大まかな物流ラインの流れは以上です。
ーー センター内では、作業ごとにチームが組まれているのでしょうか?
大矢さん:
そうですね。入荷された食品を確認する検品セクションとか、注文ごとに商品を仕分けるピッキングセクションなど、パートタイマーや派遣社員で働いているスタッフは、各作業に応じたセクションに配属されます。
また、セクションごとに現場を管理する担当社員がいます。担当社員は、受け持っている作業を効率的にするための工夫や改善、セクションに所属するスタッフの教育を担当します。
加えて、パートや派遣の方々は、スキルや経験に応じて評価され、それによってランクが上がる評価制度があります。一番高いランクの人は「スーパーバイザー」と呼ばれ、担当社員と一緒になってセクションを盛り立てていきます。パートから社員になった方も多いですね。ORD海老名ステーションは、そういったスタッフのみなさんの力で、成り立っています。
ーー 大矢さんたち現場管理者も、担当セクションを持ってるんですか?
大矢さん:
いえ、僕らは違います。セクションごとに所属している担当社員が、それぞれの作業に対して部分最適する役割を担っているとしたら、僕らは入荷から出荷までの物流ライン全体が円滑に回るように全体最適をする役割です。
予想外に対して、臨機応変に対応できるか
ーー 物流ラインの全体最適というと、どういう動きが求められるのでしょうか?
大矢さん:
まずは生産計画を立てることですね。お客様からどれくらい注文が入りそうかという需要予測を立てながら、翌週の出荷に備えて、曜日ごとに必要な作業量や確保すべきスタッフのリソースの計画を立てます。
この予測が大幅に上振れてしてまうと、お客様からの注文に対応できずに、出荷遅延が発生してしまいます。それだけは絶対に避けないといけないので、他の事業部と密に連携を取りながら、計画の精度を磨いています。
とはいえ、Oisixではお客様からの注文がシステムに登録されるのが出荷前日の18時です。また、天候の急激な変化などで、思わぬ需要の増減が発生する可能性もあります。食という日々変化するものを扱っている以上、多少なりとも計画の修正は必ず必要になるんですよ。
そのため、計画からのズレに適宜調整することが常に求められます。予想外の出来事に対して臨機応変に対応することが、僕ら現場管理者にとって最も重要な仕事ですね。
ーー 例えば、予想より注文が多かった場合、どのような対応をするのでしょうか?
大矢さん:
計画より上振れた際は、スタッフさんの出勤を早めてもらったり、勤務時間を延長してもらったりと、人材リソースの調整がまず求められます。また、入荷量も増えるので、その分のスペースを確保する調整も必要です。
とにかく出荷遅延だけは絶対に避けねばならないので、場合によっては、僕らも物流ラインに入って実作業を手伝うこともあります。もう総力戦ですよ(笑)。
現在、会員数が伸び、注文量も増えているので、物流ラインをスムーズに回る難易度はますます高まっています。そういう状態なので、出荷を無事に終わることができると、いつもホッと胸をなでおろしているのが正直なところです。
巨大な物流拠点が新設され、更なる挑戦へ
ーー 確かに、お客様からの注文が増えれば増えるほど、物流現場のオペレーションの難易度は高まっていきますよね。数年前と比べて、仕事のやり方も変わってきましたか?
大矢さん:
はい、かなり進化していると思います。以前は悪戦苦闘していた出荷量にも、現在では簡単にクリアすることができています。プロダクトセンターで働くみんなの改善と努力の賜物ですね。
一方、Oisixの会員数の伸びも想像以上なので、僕らが対応すべき出荷量もどんどん高まっています。ひとつハードルを超えたら、また次のハードルが設定されるような状態が続いていて、強制的にレベルアップが求められる現場なんです(笑)。
とはいえ、今のORD海老名ステーションで対応できる出荷量にも限界もあるので、2021年には今の3倍の出荷量に対応できる物流拠点が海老名に新設される予定です。今は、新しい拠点に移行するまでの過渡期という状態ですね。
ーー 新しい物流センターはかなり巨大なものになると聞いています。これまで以上のオペレーション管理が必要になりそうですよね。
大矢さん:
そうですね。おそらく新施設では、1000名近くのスタッフが常に在籍することになると思います。
現在のORD海老名ステーションには、600名程度が在籍していて、1日あたり250名程度が稼働しています。導入する機械によってオペレーションの内容や稼働に必要な人数は変わりますが、おそらく現在より1.5倍くらいの人手が必要になる見込みです。
ーー そうすると、物流ラインをスムーズに回すオペレーションの難易度もまた高まりそうですね。
大矢さん:
そうですね。インターネットの食品宅配サービスを、この規模で行なっている会社は恐らく世界中どこにもないと思うので、前代未聞の物流現場になると思います。
生産計画の立て方から、スタッフのマネジメント、物流ラインの進捗管理、予想外の出来事への対応まで、全てにおいて新しい挑戦がはじまるでしょうね。この規模の物流ラインをしっかりと安定稼働させていく責任感を感じるとともに、挑戦しがいを感じます。
どの物流現場にいっても活躍できる人材になる
ーー 大矢さんが感じる、プロダクトセンターの現場管理者の仕事に必要な要素とは何だと思いますか?
大矢さん:
やはり臨機応変力ですかね。次々と予想外が起こる職場なので、発生した出来事に対して、前向きに機転を利かせていくことが大切です。
ただ、予想外のことが連続して起こると、精神的には疲れますよね(笑)。そういう意味では、メンタルがタフな人が向いているとは思います。僕も、現場管理者を長くやっていますが、だいぶ鍛えられました。今では、ちょっとやそっとの予想外の出来事では全く動じなくなってきましたね。
そもそも、僕らは誰も経験したことのない物流に挑戦し続けているので、その過程でトラブルは起こって当たり前なんです。予想外の出来事に恐れずに、前向きに挑戦していく姿勢が大切です。
ーー 最後に、大矢さんにとっての仕事のやりがいを教えてください。
大矢さん:
僕は自分を成長させてくれる環境を求めて、オイシックス・ラ・大地に入社しましたが、プロダクトセンターの現場管理者はビジネスの経験値を高める上でもってこいな環境です。
20代のなかばで、こんな大人数のスタッフをマネジメントして、誰もやったことのない現場の最前線で、責任ある仕事ができるなんて滅多にない経験だと思います。大変な職場ではありますが、その分、自分の成長に跳ね返ってきていると感じてますね。
これからネットショッピングが広がっていく社会において、物流の重要性は一層高まっていくはずです。生鮮食品という扱いが難しい商材を、この規模で取り扱う経験をしていたら、どこの物流現場にいっても活躍できる人材になれるのではないでしょうか。
新しい物流拠点が新設され、僕らに求められることは高まっていきますが、前代未聞の物流現場で挑み続けていきたいです。
執筆:井手桂司・編集:ORDig編集部