オイシックス・ラ・大地がメインスポンサーをつとめるプロ野球チーム「オイシックス新潟アルビレックスBC(ベースボール・クラブ)」。2024年からプロ野球イースタン・リーグに参加し、初年度から既存のプロチーム相手に白熱した試合を繰り広げました。
その結果、2024年度のホーム観客動員数は前年比4倍となる約8万人となり、これはイースタン・リーグ所属チームの中で3番目に多い数字です。2年目となる2025年度は、ファームリーグ全体で1位となることを目標に掲げ、様々な取り組みを進めています。
そもそも、オイシックス・ラ・大地が新潟の地でプロ野球に参画した理由とは。そして、球団運営を通じて、どのようなことを成し遂げたいのか。今回、オイシックス新潟アルビレックスBCプロジェクト統括責任者の白石夏輝さんに話を聞いてみました。
(▼)こちらのインタビューは動画でご覧いただくこともできます。
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新潟の地域に、プロ野球の魅力を広げていく
── はじめに、オイシックス・ラ・大地が球団経営に参加した背景を教えてもらえますか?
白石さん:
実は、「いつかプロ野球チームを持てたら嬉しいね」ということは、昔から社内で夢物語としてよく話されていたんですよね。
日本には様々なプロスポーツがありますが、プロ野球は企業名をチーム名につけられることが特徴です。ファンもチームを企業名で呼んでくれる文化があり、企業の認知度を高める意味でも強い関心をもっていました。
こうした夢物語が現実に変わったのは、日本野球機構(NPB)による球団数の拡張(エクスパンション)がきっかけです。野球人口の拡大とプロ野球の魅力を多くの地域で広げることを目的に、球団数を増やしていくことが決まり、オイシックス新潟アルビレックスBCが新球団として選ばれることになりました。

── 球団運営を通じて、どのような価値を生み出していきたいですか?
白石さん:
オイシックス・ラ・大地としての観点でいうと、全国的な知名度の獲得です。Oisixのお客さまは年々増えていますが、まだ都市部に集中している状態です。より多くの方にサービスをご利用いただくためにも、球団運営を通じて認知度を高めていきたいと考えています。
同時に、野球界という観点では、これまでNPBに加盟する球団がなかった地域に、プロ野球の魅力を広げていくことが、新球団に期待されていることです。その期待に応え、野球界の更なる発展に貢献していきたいと考えています。
野球をはじめる子どもたちや、プロ野球の試合に足を運んでくれる方々など、新潟という地域で野球人口を増やしていく。それが新球団にとって重要なミッションとなります。
日本一おいしい球団、日本一選手が育つ球団
── 球団として目指しているビジョンについて教えてください。
白石さん:
自分たちらしい球団のあり方とは何かを日々模索していますが、いまビジョンとして掲げているのは「日本一おいしい球団、日本一選手が育つ球団」というものです。これを実現するために僕たちは日々奮闘しています。
日本一おいしい球団に関しては、オイシックス・ラ・大地が経営参画している強みを活かし、食を軸とした球場での体験を充実させていきたいと考えています。また、選手の体づくりにおいても食は重要ですので、その点も徹底的にサポートしていきたいです。
日本一選手が育つ球団に関しては、NPBの世界で活躍する選手を数多く輩出することを目標に掲げています。多くの選手が新潟に来て、僕たちの球団を経て、NPBにドラフト指名される。もしくは、またNPBの舞台に戻っていく。育成が優れていると言われるような球団を目指しています。
── 「日本一おいしい球団」を目指す取り組みとしては、具体的にどのようなものがありますか?
白石さん:
代表的なところでは、自社で運営するスタジアムグルメですね。以前は、外部の飲食店さんに依頼し、球場外で調理したものをスタジアムで販売することが一般的でした。ですが、できたてのおいしい状態で提供したいと考え、現在はスタジアム内で調理しています。
おいしい新潟県産食材を使ったスタジアムグルメを目当てに、球場にいきたいという声も増えています。メニュー開発から運営までを自社ですべて完結できるのは、食を軸にしたオイシックス・ラ・大地ならではの強みだと感じています。

白石さん:
さらには、オイシックス・ラ・大地のグループ会社には、幅広い分野でフードサービスを提供するシダックス社があります。スタジアムグルメの運営をはじめ、選手の食事提供においても、シダックス社にサポートしてもらっています。
プロ野球は遠征が多いんですが、試合前の食事がお弁当だと選手の身体が温まりにくいんですよね。そのため、シダックスが保有するキッチンカーで現地に向かい、調理師資格を持つスタッフがその場で調理を行い、できたての状態で食事を提供しています。
メニューもアスリートの体に最大限配慮したもので、シダックスの公認スポーツ栄養士のメンバーがメニューを監修してくれています。選手たちからも好評で、良いイメージで試合に臨めるといった声をもらっています。

球団運営に欠かせない、地域とのつながり
── 2024年は球団運営初挑戦となった1年でしたが、振り返ってみていかがでしたか?
白石さん:
球団運営の経験がない中で、何もかもが手探りの一年でした。来場いただいたお客さまに「球場に足を運ぶと楽しい!」と思っていただけるよう、試行錯誤を繰り返しながら、ひたすらに駆け抜けた一年でしたね。
振り返ると、本当に色々な取り組みをしてきましたね。スタジアムグルメを魅力的にすることもそのひとつですし、球場で花火を打ち上げたり、アート展を開いたりもしました。様々な催しを企画し、「球場に行くと、なにか面白いことがある!」と思っていただける状態を目指しました。
多種多様な取り組みを実行する中で、うまくいったものもあれば、そうでないものもあります。ただ、「まずはやってみよう!」と考え、チャレンジの量を大切にしてきました。

白石さん:
また、球団運営という点で言うと、地域の方々の協力に本当に助けてもらっています。
たとえば、「日本一おいしい球団サポーターズ」と称して、選手の日々の食事や試合時の補食となる飲料をご支援いただく企業・団体・個人さまを募集しています。ありがたいことに、多くの方々に協賛いただき、温かいご支援に感謝の思いでいっぱいです。
他にも、長岡市にあるカフェレストラン『Beかふぇ』は、オフィシャル「食堂」パートナーとして、選手の食事を支援してくださっています。ナイトゲームが終わった後でも食堂を開いてくださって、栄養バランスのとれたメニューを選手に提供してくださっています。
このように、僕たちの目指す球団運営では地域との繋がりは欠かせません。球団のスタッフだけでつくりあげる球団ではなく、地域の方々と一緒になって、より良い球団づくりを進めていきたいです。

野球界のベンチャー企業ならではの面白さ
── 白石さんとしても球団運営は未知の挑戦でしたが、1年間取り組んでみて、どのような発見がありましたか?
白石さん:
一番の学びは「スポーツビジネスは面白い」ということですかね。
毎試合、数千人のお客さまが球場に足を運び、目の前で繰り広げられるプレーに一喜一憂し、ひとつの場所で一緒に盛り上がる。本当に非日常の空間で、その熱気を現場で肌で感じられる面白さは、スポーツビジネスならではだと感じました。
同時に、プロ野球の球団運営ならではの大変さも味わいました。プロ野球が他のスポーツと比べても経済規模が大きい理由として、試合数の多さが挙げられると思います。時には週6日試合があり、火曜から日曜まで毎日運営が必要となります。
僕たちは小規模な球団ということもあり、コスト削減の一環として、昨年は自分たちで運営を極力行うようにしていました。早朝からテントや机を準備し、試合終了後はそれらの撤収作業を行います。
僕たちは「野球界のベンチャー企業」みたいなところもあり、自分たちで全てを経験する面白さを感じる一方で、その大変さも痛感した1年でした。

── 新潟という地域に根ざして働くのも新鮮だったと思いますが、その点はいかがですか?
白石さん:
新潟で働きはじめて痛感したのは、自分たちの認知度はまだまだ低いということです。「Oisixって何の会社?」と言われることが多く、約10年前に自分がOisixで働きはじめた頃を思い出しました。
当時、Oisixの新規会員を募るプロモーションを担当しており、色々なところにブース出展をしては、道行く方々に声をかけていました。関心をもっていただいた方にサービスをご案内するわけですが、Oisixを知っている人は当時ほとんどいなかったんですよね。
この10年間で、Oisixの認知率は高まったように感じていましたが、新潟ではまだまだ低い。まるで、10年前にタイムスリップしたような感覚に陥りました。そういう意味でも、Oisixがプロ野球に参画した意義は大きいと感じました。
目指すは、野球界と新潟の更なる発展
── 最後に、球団運営を通じて実現していきたい未来について教えてください。
白石さん:
やはり、自分たちが目指していきたいのは、野球界と新潟の更なる発展への貢献です。
野球界という点では、オイシックス・ラ・大地ならではの強みを活かした球団運営ができると、他球団とはまた違った存在として、野球界にいい影響を与えられるのではないかと考えています。
食はもちろん、オイシックス・ラ・大地はITテクノロジーにも強みをもった会社です。スタジアムグルメの更なる進化だったり、食を通じた選手の体づくりだったり、僕らならではの取り組みにどんどん挑戦していきたいです。
また、地域の発展という点では、新潟は食が豊富な土地でもあり、食産業も盛んで、オイシックス・ラ・大地との親和性がとても高いと感じています。球団運営によって生まれた地域との繋がりによって、新潟との関係はより深いものとなっています。
たくさんの地域の方々のお力も借りながら、新潟を「食のまち」としても、「野球のまち」としても盛り上げていきたいです。
