「これからの食卓、これからの畑」を理念に、食にまつわるさまざまな社会課題の解決を目指すオイシックス・ラ・大地。今回紹介するのは、Oisixの専属フォトグラファーとして、食や食をつくる人の魅力を伝える写真・映像制作に携わる山岡三和さんです。
山岡さんは、仕事で写真を撮るかたわら、個人の写真家としても活動しています。2026年には、長年撮り続けてきた故郷の風景をテーマにした個展を銀座と大阪で開催。多くの来場者を迎え、大きな反響を呼びました。
商品の価値を届ける仕事としての写真。そして、正解のない問いと向き合う表現としての写真。二つの世界を行き来する中で、山岡さんは何を見つめ、何を大切にしているのでしょうか。その活動の原点にある想いや、写真家としての歩みについて伺いました。
(▼)こちらのインタビューは動画でご覧いただくこともできます。
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「おいしそう」の先にあるものまで届けたい
── はじめに、Oisixのフォトグラファーとして、どんな仕事を担当されているかを教えてください。
山岡さん:
入社以来、Oisixで販売する商品の販促写真の撮影を主に担当しています。商品の魅力を伝える写真はもちろん、産地に足を運び、生産者の方々や畑の様子を撮影することもあります。また時には写真だけでなく、動画の撮影も行っています。

── Oisixの商品を撮影する際のこだわりはありますか?
山岡さん:
まずは「おいしそう」と感じてもらうことですね。ただ、それだけではなく、その先にある「Oisixがある暮らし」まで想像していただけるような写真を目指しています。
例えば、「この商品が食卓に並んだら、どんな時間が生まれるだろう」とか、「こういう食卓のある暮らしは素敵かもしれない」と感じてもらえるような。そんなことを考えながら撮影しています。
商品そのものの魅力だけではなく、スタイリングやライフスタイルも含めて提案する。そうすることで、お客さまにより豊かな食体験をイメージしていただければと思っています。

── 「憧れるけれど遠すぎない」という感覚も大切にされているのでしょうか。
山岡さん:
そうですね。「この一品があるだけで、食卓が少し素敵になる」と感じてもらえるような世界観を、デザイナーのメンバーとよく話しながら作っています。
手の届かない特別な暮らしではなく、「Oisixがあることで、日常の食卓が少し豊かになる」。そんな暮らしのイメージまで届けられる写真を、これからも撮り続けていきたいと思っています。
故郷で見た風景が、オイシックス入社の原点に
── 次に、山岡さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
山岡さん:
私は広島出身なのですが、最初は地元の広告写真スタジオに入社しました。そこで企業のチラシやパンフレット、学校案内など、さまざまな広告写真の撮影に携わりました。
その後、もっと写真について深く学びたいと思い上京し、百貨店のカタログ撮影などを手掛ける制作会社でアシスタントとして経験を積みました。その後はECアパレル企業で商品撮影などを担当し、そこからオイシックスへ入社しました。

── 様々な業界で経験を積まれてきた中で、なぜオイシックスへの入社を決めたのでしょうか。
山岡さん:
実は、その理由は私自身の原体験にあります。
父方の祖父母が広島の山間部で代々農業を営んでいたのですが、祖父母が亡くなった後、その土地を継ぐ人がいませんでした。
すると、人の手が入らなくなった農地はあっという間に荒れていきました。耕作放棄地となり、少しずつ山に飲み込まれていくような光景を目の当たりにしたんです。
20代後半の頃、その現実に直面したことで、「なぜこうなってしまったんだろう」と考えるようになりました。
── そこから、写真家としての活動にもつながっていったのでしょうか。
山岡さん:
そうですね。その頃から故郷の風景を写真で記録するようになりました。
撮影を続ける中で、祖父母の故郷だけではなく、日本各地で同じようなことが起きていることにも気づきました。耕作放棄地や空き家、過疎化など、地方が抱える課題が目に入るようになったんです。
もちろん一つの要因だけではありませんが、東京で働きながら経済合理性や生産性を追求する社会の中に自分自身もいて、その流れをある意味では後押ししてきた側面もあるのではないか、と考えるようになりました。
だからこそ、自分の持っている写真という技術を、農業や食に関わる分野で活かしたいと思うようになったんです。

── その想いがオイシックスとの出会いにつながったのですね。
山岡さん:
はい。オイシックスは、日本の農業や食文化を大切にしながら事業を展開している会社です。
私自身、農業や地域の課題に対して何か貢献したいという気持ちを持っていたので、「自分の仕事を通じて社会に関わることができるかもしれない」と感じました。
写真を撮ることだけではなく、その先にいる生産者の方々や、お客さまの食卓につながる仕事ができる。そこに大きな魅力を感じて入社を決めました。
個人的な写真が、誰かの物語になる。
── Oisixでの仕事と並行して、個人の写真家としても活動されています。こちらはいつ頃から始められたのでしょうか。
山岡さん:
仕事以外でも写真は撮っていたのですが、作品として撮り始めたのは、先ほどお話しした祖父母の故郷がきっかけでした。耕作放棄地になり、少しずつ姿を変えていく故郷の風景を見て、「この移ろいを残しておきたい」という気持ちが自然と湧いてきたんです。家族の歴史とも深く結びついた場所だったので、最初は本当に自分のために撮っていた写真でした。
── そこから個展の開催につながっていったのですね。
山岡さん:
はい。長い時間をかけて撮り続ける中で、撮り続けてきた写真を自分以外の人にも見てもらいたいという気持ちが芽生えてきました。
とても個人的な写真ではあるのですが、それを見た人が何かを感じたり、それぞれの体験や記憶とつながったりして、共感が生まれたら素敵だなと思ったんです。そうした想いから、個展という形で発表することにしました。

── 実際に開催してみて、いかがでしたか。
山岡さん:
正直なところ、最初は「本当に人が来てくれるのだろうか」という不安が大きかったです。ですが、銀座と大阪の二会場で開催したのですが、累計で4,000人ほどの方に来場いただきました。銀座ではトークイベントも開催し、満席になるなど想像以上の反響をいただきました。
また、作品の舞台になった広島の新聞にも取り上げていただき、それを見て来てくださる方もいました。中学校時代の同級生から連絡をもらったり、大阪に住む広島出身の方が足を運んでくださったり。本当にさまざまな出会いがありましたね。
── 来場者の方からは、どのような反応があったのでしょうか。
山岡さん:
展示会場には感想を書いていただくカードを置いていたのですが、「実家じまいの経験と重なって涙が出ました」とか、「自分の故郷のことを思い出しました」といった感想をたくさんいただきました。
もともとは自分や家族の体験から生まれた作品だったのですが、それが展示を通して誰かの体験とつながり、共感を生み出していく。そのことにとても大きな喜びを感じました。自分だけの写真だったものが、多くの人の中で新しい意味を持ち始めた。そんな感覚があったんです。

── 個展の開催にあたっては、会社からのサポートもあったそうですね。
山岡さん:
そうなんです。個展を開催することは以前から上司にも相談していました。
今回の作品には、耕作放棄地や地域の過疎化といった社会課題が背景にあります。そうしたテーマは、「これからの畑、これからの食卓」を企業理念に掲げるオイシックスとも重なる部分があると感じていました。
私は写真という手段を通じて課題を伝えたい。会社はビジネスを通じて課題解決に取り組んでいる。その方向性には共通点があると思ったんです。そこで相談したところ、採用活動の一環として制作費の一部をサポートしていただくことになりました。
── オイシックスには、個人の挑戦を応援してくれる文化があるのでしょうか。
山岡さん:
そう思います。オイシックスには、「こんなことをやってみたい」と手を挙げたり、新しい提案をしたりする人を応援する文化があります。今回も、誰一人として「そんなことやって意味あるの?」と否定する人はいませんでした。
むしろ、「面白いね」「やってみようよ」と背中を押してくれる人がたくさんいたんです。私は、そういうところがこの会社のすごく好きなところですね。本当に、人の挑戦を冷笑しない会社だと思います。
仕事と表現、その両方を続けることで広がった視野
── Oisixでの仕事と個人の写真家活動。異なるベクトルの活動を続けることで、相乗効果を感じることはありますか?
山岡さん:
それはすごくありますね。
Oisixでの仕事は自由度も高いのですが、その一方でしっかりと成果を出すことが求められます。私自身も写真を撮るだけではなく、「どうしたらお客さまに商品の魅力が伝わるだろう」「どうしたら会社に貢献できるだろう」といったことを常に考えています。
写真を撮ることそのものが目的ではなく、その先にいるお客さまや生産者の方々のことまで考えながら仕事をしているんです。

── 一方で、個人の作品づくりはいかがでしょうか。
山岡さん:
個人活動は、仕事とはまったく違いますね。数字を追う必要もありませんし、誰かが正解を教えてくれるわけでもありません。何を撮るのか、どう表現するのか。それを自分自身で問い続けながら進んでいく世界です。
だからこそ難しさもあるのですが、その分、自分の感覚や考えとじっくり向き合うことができます。
── 真逆の世界だからこそ得られるものがあるのでしょうか。
山岡さん:
そう思います。仕事では、「どうしたらより良い成果につながるか」という正解をみんなで探していきます。一方で作品づくりでは、そもそも正解が存在しません。
でも、その両方を経験しているからこそ、それぞれの面白さがより深く理解できるようになった気がします。
作品づくりを通して表現の奥深さを知ることで、仕事の撮影にも新しい視点が生まれますし、仕事の中で培った「相手に届ける」という意識は、作品づくりにも活きています。どちらか一方だけでは得られなかった学びがたくさんありますね。

── まさに二足のわらじだからこそ得られる感覚ですね。
山岡さん:
そうですね。Oisixで働く中で、目標を達成することや、チームで成果を出すことの面白さをたくさん学びました。
だからこそ、正解のない表現活動にも思い切り向き合えるのだと思いますし、逆に作品づくりを続けているからこそ、仕事の面白さも再発見できています。
どちらかを選ぶというより、どちらもあるからこそ、自分らしくいられるのかもしれません。
まず作ることから始まる。挑戦を通して得た学び
── 今回の個展を通じて、ご自身の中で得られた学びはありましたか。
山岡さん:
本当にたくさんありました。展示をやると決めてから、写真を撮るだけではなく、プリントや額装、会場の空間づくりなど、普段の仕事では経験しないことにも向き合いました。
一つの作品を完成させるために、どう見せるのか、どう伝えるのかを総合的に考える必要があって。その経験を通して、写真家としてだけではなく、一人のクリエイターとしても大きく成長できたと感じています。
── 特に印象に残っていることはありますか。
山岡さん:
自分一人の力だけでは、ここまで来ることはできなかったということですね。作品づくりの過程では、本当にたくさんの方に写真を見てもらいましたし、アドバイスもいただきました。
自分の能力を超えようとするときには、人に見てもらうことや、人の意見を取り入れることがすごく大切なんだと改めて実感しました。
アウトプットの質が高くなければ、人の心を動かしたり、共感を生み出したりすることはできません。だからこそ、自分の中だけで完結させず、人の目に触れる場所に出していくことが成長につながるのだと思います。
── その経験は、今後の仕事にも活きていきそうですね。
山岡さん:
そう思います。オイシックスも会社の規模が大きくなり、ロジカルシンキングなど様々な考え方を学ぶ機会があります。でも、クリエイターにとっては、まず作ることが何より大切だと思うんです。
もちろん考えることも大事ですが、まず形にしてみる。作ってみる。動いてみる。すると、それを見た人が「いいね」と言ってくれたり、新しいプロジェクトが動き出したりすることがあります。
私自身も今回の個展は、「やりたい」と思ったところから始まりました。まず作り、まず動いたからこそ、多くの方との出会いや学びにつながったのだと思います。
── 最後に、これから挑戦したいことや大切にしていきたいことを教えてください。
山岡さん:
今回の経験を通して得た学びを、自分の中だけに留めず、周りの人たちにも伝えていけたらと思っています。特に若いクリエイターには、「まず作ってみること」「まず動いてみること」の大切さを伝えていきたいですね。
もちろん私自身もまだまだ成長の途中です。だからこそ、これからも新しい挑戦を続けながら、自分自身も成長し続けていきたいと思っています。






