社長メッセージ

山頂の見えない山を登る幸せ

Oisixは今年で創業20周年を迎えました。率直な思いを聞かせてください。

20年経って「まだこんなものか…」という思いが正直なところです。不甲斐ないというか、望んでいた場所には、まだまだ至っていない感覚があります。

一方で、『大地を守る会』『らでぃっしゅぼーや』と一緒になるなど、20年前には考えもしなかったことも起こりました。私たちは「これからの食卓、これからの畑」というミッションを掲げていますが、憂いなく攻めやすい状態ができたと感じています。20年経って、ようやくスタートラインに立てたような感じでしょうか。

この20年を振り返って、自身の心境の変化はありますか?

僕の中でわからなくなってきていることは、昔は山頂に登りたかったんですよね。山頂に登ったら素晴らしい景色が見えると信じて、目の前の険しい坂を一生懸命に登り切ろうとしていました。

でも、今は山頂からの景色が見たいのではなく、純粋に登ることが好きなんじゃないかと思ってきました。むしろ山頂より、坂が好きなんじゃないか。山頂にたどり着いてはいけないんじゃないかと(笑)。そういう風に、坂を登ることを幸せと思いながら、働けることは素晴らしいですよね。

僕らは「食の社会課題をビジネスで解決する」という山を登っていますが、山頂はいまだに遥か遠く、頂が見えてきたと思ったら、もっと高い頂が現れる登りがいのある山です。終わりの見えない山を選択したことは、僕らが夢中で働くためには幸運だったと思います。

 

根っこにある想いは、人の役に立つ自分が好き

そもそも高島さんが起業しようと思った理由を教えてください

もともと大学院生の頃に、ほとんどノリで友人たちと学生ベンチャーを起業し、会社をやる面白さを知りました。ただ、当時の僕らは事業計画すらなかったので、小さく成功して終わりそうだと思ったんですね。生意気なんですけど、このままだと小金持ちなだけの大人になってしまうと(笑)。

そんな僕らに影響を与えてくれたのが『サンクチュアリ』というマンガです。日本を変えていこうと燃える幼なじみのふたりの若者が主人公で、一人は裏社会で暴力団の組長になり、もう一人は表舞台に立って国会議員になる。裏と表のそれぞれから、日本を変えるために共に立ち上がる物語なんです。

この『サンクチュアリ』に大きく影響を受けて、僕らも社会に散らばって、それぞれの場所でビジネスの勉強をし、再び集まって大きな事業で起業し直そうと仲間たちと約束を交わしました。そうして、僕はマッキンゼーという会社に入社をしましたが、毎週末には仲間と集まり、どの領域で事業をしようかと話しあっていました。

その結果、食の領域を選んだ決め手は何だったんですか?

インターネットを軸にすると、はじめから決めていました。では、ネットで何をやっていこうかと考えたときに、自分たちの根っこにあるものは「人の役に立ちたい」という想いだと気づいたんですね。こう言うと、なんだか「いい人たちの集団」のように聞こえますが、正確に言うと「人の役に立っている自分が好き」ということに気がついたわけです(笑)。

ネットを使って、世の中の役に立つビジネスとは何か? 様々な角度から考えるなかで、「食」という答えにたどり着きました。

食の業界には様々な問題があることもわかってきたし、食品のネット販売だけは、ネット先進国であるアメリカでも失敗例ばかりであることが見えてきました。ビジネスチャンスがどれだけあるかは不透明でしたが、成功したら世界初なんだと考えると興奮してきたんです。

 

ますます多様化する解くべき食の課題

やはり食の領域とは、解くべき課題が多い分野なのでしょうか?

そうですね。特に大きかったのは、「自分たちの食べているものは、本当に安全なんだろうか?」という安全性の問題です。創業した2000年当時は、雪印集団食中毒事件やBSE問題など、食に関する問題が毎年のように噴出していて、食の安心・安全が大きく問題視されていました。

スーパーでは、主婦の方々が食品の裏側に表示されている原材料をチェックする姿をよく見かけます。でも、そこには多くの原材料名が並んでいて、読んでもよくわからないけど、たくさん並んでいるとなんだか身体によくなさそう、と思う。これだけモノを手に入れることが便利になったのに、手に入れるものが安全かどうかわからない社会は、幸せと呼べないですよね。そのため、僕らは「安心安全な食材を届ける」を起点に事業をスタートさせました。

創業当初に掲げていたミッションは「豊かな食生活をより多くの方に」でしたよね。一方、現在のOisix ra daichiのミッションは「これからの食卓 これからの畑」です。20年間で、解くべき課題の認識が広がっていったのでしょうか?

それこそ解くべき食の課題は無限にあるし、ますます多様化しています。食に関する様々な課題に取り組むなかで、20年前と比べると、僕らのやっていることも随分と広がってきました。

例えば、InstagramなどのSNSで他人の華やかな食卓を眺めていると、自分の食卓を見すぼらしいものにしたくないと思えてきます。だけど、働きながら育児をしている方々は料理に使える時間が限られています。そんなニーズに応えるために、時短をしながら、料理をしている実感も得られる『Kit Oisix』をはじめました。

同時に、料理でストレスを解消したり、料理を生活の楽しみにしている方々も大勢います。現在、『らでぃっしゅぼーや』では、料理を目一杯楽しみたい方向けのサービスを充実させています。また、『大地を守る会』では、薬やサプリメントではなく、日々の食生活によって健康な体づくりをしていきたい方々のお悩みに応えるべくサービスづくりをしています。

–Oisix ra daichiでは、食品宅配だけでなく、移動スーパー『とくし丸』やオーダーメイドケータリング『CRAZY KITCHEN』など、様々な事業に取り組んでますよね

食の領域には本当に様々な問題があって、それぞれの課題に懸命に取り組んでいる人たちがいます。僕らはそういう方々と一緒になり、僕らが持っている経営リソースをそのチームに追加することで、課題解決のスピードを高めたいと思っています。そういう想いで、食の社会課題に取り組んでいる企業のM&A(企業の合併・買収)を進めてきました。

例えば、移動スーパー『とくし丸』。とくし丸は「買い物難民」という課題を解くための事業をしています。買い物難民というと、離島や過疎の地域の話だと思っていましたが、実は東京都内にも大勢いらっしゃいます。自宅とスーパーマーケットが300メートル以上離れると、足腰が不便な高齢者の方は買い物にいけないんですね。

買い物は、今日食べるものを自分で選べる楽しみであり、その機会が失われることは生きる楽しみを奪うことになってしまいます。とくし丸は、買い物難民の方々の自宅近くまで出向き、買い物をする楽しみを届けています。また、買い物をする際にとくし丸のスタッフや近所の方々とちょっとした会話をすることで、心の潤いにもなります。とくし丸のもたらす社会的価値は計り知れないと感じていて、2016年から一緒にやっています。

 

自分たちが、国内外の食ビジネスを変えていく

Oisix ra daichiでは、国内外の食のスタートアップやフードテック企業へ出資するコーポレートベンチャーキャピタル『Future Food Fund』を設立したり、そういった企業が扱う食品を販売する『Oisixクラフトマーケット』など、世界の食ベンチャーを後押しする活動にも近年注力しています。こういった活動の背景を教えてください。

日本の食文化は世界でもトップクラスだと思います。家庭でこんなに様々な料理をする国は、世界中で見たことがありません。日本のシェフの腕前や、農作物や水産物も、世界でトップクラスの評価を受けています。

一方、食のビジネスに目を向けると、欧米と比べて盛り上がっていない現状があります。残念ながら、日本では食のスタートアップを立ち上げて、素晴らしいものをつくってもあまり儲からない。うまくいって地方の誇れる小さな食品企業として存続できるくらいで、上場なんて滅多にできません。

例えば、アメリカでは「サードウェーブコーヒー」の旗手であるブルーボトルコーヒーをネスレが買収したことで、一気に成長を加速させました。もはやブルーボトルコーヒーは新しい文化をつくっただけでなく、経済的にも大成功を収めています。このように欧米では、食のベンチャーに大手の食品会社が投資をし、新しい食のビジネスが次々と生まれていく生態系ができあがっているんです。

食の文化においては、日本は圧倒的に優れているにも関わらず、食のビジネスにおいては出遅れている。日本でも、新しいことに挑戦する食のベンチャーが経済的に報われるエコシステムを育てないと行けない。そういう課題意識から、『Future Food Fund』や『Oisixクラフトマーケット』をやっています。

一方、中国や香港での『Oisix』の海外展開もはじまりました。海外市場への想いも聞かせてください。

僕らは、国内マーケットに限界を全く感じておらず、国内だけで数倍の規模に成長できると思っています。

一方、食品のサブスクリプションモデルの企業でいうと、Oisix ra daichiは世界でも有数の規模であると言えると思います。世界中をみても、同様のビジネスモデルで収益を上げ、上場している企業はほとんどないと思います。そのため、海外の企業から、一緒に組んでほしいと声をかけられることもありました。僕らが培った知識や経験を活かして、様々な国で事業展開をするのは単純に面白そうと思ったんですよね。

また、海外でも食の問題は深刻になっています。例えば、中国では中国産の野菜に対する安全への懸念が強いんですね。この問題って、僕らが日本でこれまでに通ってきた道なんですよ。中国で安心できる食生活を送りたいと思っている方々に対して、僕らがやってきたことがお役に立てるかもしれない。

僕たちの場合、食の社会課題を解決したくてビジネスをやっているので、それは日本でも海外でも同じです。課題解決に僕らの強みがあるし、課題があればチャレンジしていくのが僕らのスタイルだと思い、海外市場にも挑戦していきたいです。

 

臨機応変力が一番優れている会社でありたい

–2000年の創業時と比べて、解くべき課題の数がますます増えていっているように感じますね。

そうですね。まだ解きはじめてない課題まで見えてしまっているんですよね。あれもこれもやりたいし、やらなきゃという状態です。

結局、僕らは儲けたいのではなくて、課題を解きたいんですよね。そして、そういう風にしていると成長戦略に困りません。僕らの役割は永遠にあるように感じています。

誰も解いたことのない様々な課題にアプローチするにあたり、Oisix ra daichiはどういう会社であるべきと思いますか?

変化対応をしていくことが非常に重要と考えています。僕たちはビジョナリーじゃないんですよ。今年のコロナウイルスもそうですけど、想像もつかないことが次々と起こるなかで、「10年後の未来はこうなっているはず」と予測を立てようと思っても、そんな未来のことはよくわかりません。

大切なのは、一生懸命に未来図を描くのではなく、目の前で起きている問題にして臨機応変に対応できることだと僕は考えています。そして、Oisix ra daichiは、その臨機応変力が一番優れている会社でありたいです。

特に、食の領域って天候との戦いで、毎日が変化対応の連続なんです。台風や洪水などの天災も起こります。食の仕事をやるには、そもそも変化対応に慣れていかないとやっていけません。そういう意味でも、僕らには臨機応変力が欠かせないんです。

実際、僕らの会社にはトラブルが発生するとテンションが高まり、力を発揮する社員が大勢います。本来はトラブルなんて遭遇したくはないですが、そういう時に「臨機応変力が試される時がきた」と前向きに捉えて、積極的に動くメンバーが増えてきていると感じます。

 

食の未来を創るのは、Oisix ra daichiしかいない

次から次へと降りかかる変化やトラブルに対して、前向きに取り組める要因は何なんでしょうか?

それは、僕らの事業や会社が成長することと、社会がよくなることを完全に重ね合わせることを大事にしているからだと思います。後ろめたい売上を1円もつくらないというか。

会社が大きくなったら、その分だけ社会が良くなったと思える。そういう事業展開をしているからこそ、夢中になりやすいし、憂いなく突っ込んでいけると感じています。

最後に、Oisix ra daichiの採用希望者の人たちへメッセージをお願いします。

僕たちの会社は、万人に合う会社では多分なくて、比較的特殊な人に合う会社ではないかと思ってます(笑)。

僕たちは食の社会課題を解くことに責任感を感じています。日本の食のベンチャーとして、食の未来をスピーディーに良くしていける存在があるとしたら僕らしかいない。僕らが成し遂げるか、大した未来にならないか。そのどちらかだと思っています。

未来を創ることへの責任や、自分が未来を創ることに野心を感じるような特殊な方には、Oisix ra daichiはとても向いてると思います。お会いできることを、楽しみにしています!

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